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第10章: アバターの覚醒


空気はケツァルコアトルが放つ力で重く、雷と風でできたその体が動くたびに振動するようだった。アレックスは訓練場の広大な光景を見渡しながら構えを取った。そこは現実の外側にあるような、夢のような場所だった。ケツァルコアトル自身が作り出した空間であり、赤い太陽が浮かぶ地平線には、神の意志によって色を変える雲が漂っていた。


アレックスは眉をひそめ、緊張した面持ちでつぶやいた。「ここ…本当に現実なのか?これも訓練の一部?」


空中に浮かぶケツァルコアトルは、まるで風そのもののように自然な存在感を放ちながらアレックスを見下ろした。輝く羽を広げたその姿は威厳と知恵に満ちている。

「目に見えるすべてが現実だ、若き者よ。ここは私が作り上げた世界だ。この場所で神々の力を学ぶのだ。」


アレックスは戸惑いを隠しつつもうなずいた。しかしその目には、不完全に理解した神に対する一抹の不安が浮かんでいた。

「わかった。でも…えっと、ケツァルコアトル?長いし、もう少し呼びやすい名前にしてくれないか?」


その瞬間、空気が変わった。そよ風のようだった気流が止まり、神のエネルギーが一気に張り詰めた。

「何と言った?」ケツァルコアトルの声は雷鳴のように響いた。「私はお前の友ではないし、好き勝手に呼ばれる存在でもない。ケツァルコアトル、それが私の名だ。その名には敬意を払え。」


アレックスは神の突然の怒りに驚き、一歩後ずさったが、すぐに自分の失礼を訂正しようとした。

「ごめん、そんなつもりじゃなかった。ただ、物事を少しでも簡単にしたくて…」


ケツァルコアトルはアレックスをしばらく鋭く見つめた後、やがて緊張を緩めた。怒りの影はまだ残っていたものの、その目には静かな冷静さが戻った。

「覚えておけ、若きアバターよ。この名を軽んじることは許されない。さあ、準備をしろ。これからお前は恐怖と向き合うことになる。」


神が軽く手を動かすと、その力が一気に広がり、周囲の光景が変化し始めた。空は暗くなり、大地が震えた。訓練場は一転して敵意に満ちた場所となり、巨大なエネルギーの蛇たちがアレックスを囲み始めた。それらは影のように地を這い、次々に姿を現していく。


「これらは何だ?」アレックスは防御の姿勢を取りながら尋ねた。


「お前の恐怖だ。お前の疑念が形となったものだ。力を疑うたびに、それらはお前を襲う。進むためには、それを乗り越えねばならない。」


ケツァルコアトルの警告が終わる前に、1匹の蛇が純粋なエネルギーの攻撃を放ち、アレックスはぎりぎりでかわしたものの、着地は乱れた。容赦ない戦いが続き、神はただ黙って見守るだけだった。その目は厳しく、助けを与えることはなかった。



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数時間が経過し、アレックスは蛇たちの攻撃に何度も倒され、そのたびに立ち上がった。体力が限界に達しつつあり、ついに膝をつきながら叫んだ。

「ケツァルコアトル!少し休ませてくれ!もう無理だ…」


神はしばらく彼を見つめた後、再び軽く手を動かした。その瞬間、蛇たちが消え、訓練場は静寂を取り戻した。

「よかろう、若き者よ。休息を与えよう。ただし覚えておけ。本当の戦場では休息などない。」


地面に座り込んだアレックスは、荒い息を整えながらつぶやいた。「ありがとう…」


ケツァルコアトルはゆっくりとアレックスに近づき、彼の状態をじっと見つめた。「試練はまだ終わっていない。しか

し、お前は耐え抜いた。短い休息を許そう。この時を活用するがよい。」



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