いつも放課後になると関節技をかけにくる竹岡が、今日は席にやってこない。
不審に思った日高は、彼の席の方向を見る。
開いた窓の向こうに見える葉桜。端に寄せられ一部がなびくベージュのカーテン。四月下旬らしい景色をバックに、彼は何やら分厚い本を読んでいた。
友達同士となった幼稚園生のときから、高校二年生となった今に至るまで、彼が読書家というイメージを持ったことはない。
「竹岡。なんだその本は」
気になってしまい、自分から彼の席の傍そばまで行って聞いてみた結果。それは、日高にとって予想だにしないものだった。
「ん、これ? 白魔術の本だよ」