太陽のツッコむような威勢のいい声が飛んできた。関西弁を聞くなら、やっぱりこの声でなきゃ駄目だ。朔はしみじみ思う。そしてこの、再会の感動も何もあったものではない言われよう。朔が吹きだすと、太陽も笑った。
「じゃあ太陽が焼いたたこ焼きも、俺以外には食べさせないでよ」
「わがままやなあ……もう、しゃあなしやで」
言葉とは裏腹に嬉しそうな太陽は、いそいそと店じまいの準備を始めだした。まだ十九時前、これからがかき入れ時だというのに。
「え、閉めるの?」
「自分が言うたんやろ」
「別に今すぐじゃなくても、明日からでも……」
先ほど自分が口にした言葉の傲慢さを急に自覚し、朔が赤面しながら慌ててもごもご言っていると、太陽は目をそらして、ぽつりと言った。
「もうええねん、目的果たしたから」
「目的?」
「……朔に見つけてもらえるように、続けてただけ、やから」
ついには顔を背けてしまったが、耳が真っ赤に見えるのは赤い提灯のせいではないはずだ。朔の中で、言い逃れしようもない太陽への愛しさがとめどなく溢れた。
「太陽、こっち向いて」
「ん……」
「俺と付き合ってくれますか」
まっすぐ見据えてくる朔の視線から、太陽はまた顔をそらした。
「お、俺、わがままやで」
「うん」
「しゃべりでうるさいし」
「知ってる」
「毎日たこ焼き食わせるで」
「楽しみだな」
「……しゃあないな」
「『しゃあなし』で付き合ってくれるんだ?」
「ちゃうわ!」
感動の再会、からの愛の告白シーンにしては、太陽がさっきからやたらとキレ気味であることを、朔は不思議に思っていた。
「じゃあなんでそんなにふてくされてるんだよ」
「お、俺が言おうと思てたのに先言うてまうからやろ!」
真っ赤になってさらにキレ散らかす太陽に、またも朔は吹きだす羽目に。太陽ってこんなに可愛かったっけなあ、なんて思いながら。
「それは失礼しました。じゃあ太陽からも言ってよ」
「ずっと会いたかった、迎えに来てくれてありがとう。……俺と、付き合ってください」
「喜んで」
決死の告白に間髪入れず返されて、また太陽は照れ隠しに怒ろうとしたが、これまで見たことのないような朔の甘くて優しい表情を前に、何も言い返せなくなった。それは間違いなく、愛しい人を見つめるときのまなざしなのだと、太陽にもわかった。