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第15話

 太陽のツッコむような威勢のいい声が飛んできた。関西弁を聞くなら、やっぱりこの声でなきゃ駄目だ。朔はしみじみ思う。そしてこの、再会の感動も何もあったものではない言われよう。朔が吹きだすと、太陽も笑った。

「じゃあ太陽が焼いたたこ焼きも、俺以外には食べさせないでよ」

「わがままやなあ……もう、しゃあなしやで」

 言葉とは裏腹に嬉しそうな太陽は、いそいそと店じまいの準備を始めだした。まだ十九時前、これからがかき入れ時だというのに。

「え、閉めるの?」

「自分が言うたんやろ」

「別に今すぐじゃなくても、明日からでも……」

 先ほど自分が口にした言葉の傲慢さを急に自覚し、朔が赤面しながら慌ててもごもご言っていると、太陽は目をそらして、ぽつりと言った。

「もうええねん、目的果たしたから」

「目的?」

「……朔に見つけてもらえるように、続けてただけ、やから」

 ついには顔を背けてしまったが、耳が真っ赤に見えるのは赤い提灯のせいではないはずだ。朔の中で、言い逃れしようもない太陽への愛しさがとめどなく溢れた。

「太陽、こっち向いて」

「ん……」

「俺と付き合ってくれますか」

 まっすぐ見据えてくる朔の視線から、太陽はまた顔をそらした。

「お、俺、わがままやで」

「うん」

「しゃべりでうるさいし」

「知ってる」

「毎日たこ焼き食わせるで」

「楽しみだな」

「……しゃあないな」

「『しゃあなし』で付き合ってくれるんだ?」

「ちゃうわ!」

 感動の再会、からの愛の告白シーンにしては、太陽がさっきからやたらとキレ気味であることを、朔は不思議に思っていた。

「じゃあなんでそんなにふてくされてるんだよ」

「お、俺が言おうと思てたのに先言うてまうからやろ!」

 真っ赤になってさらにキレ散らかす太陽に、またも朔は吹きだす羽目に。太陽ってこんなに可愛かったっけなあ、なんて思いながら。

「それは失礼しました。じゃあ太陽からも言ってよ」

「ずっと会いたかった、迎えに来てくれてありがとう。……俺と、付き合ってください」

「喜んで」

 決死の告白に間髪入れず返されて、また太陽は照れ隠しに怒ろうとしたが、これまで見たことのないような朔の甘くて優しい表情を前に、何も言い返せなくなった。それは間違いなく、愛しい人を見つめるときのまなざしなのだと、太陽にもわかった。


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