「王子。そのおっぱい饅頭の群れは、ポニョン国の女性たちのおっぱいです。さすがに、無断で奪ったおっぱいを使って商品開発をするのは、ちょっと……。持ち主の元へ帰して……いえ、返してやるのが筋というものでしょう」
きっと常ならぬ状況に興奮して饅頭の入荷先をうっかり忘れてしまったが故の商品化発言なのだろうなと、王子の常識をある程度は信じているからのこそのやんわり苦言だった。
サリの言葉は、正しく王子の心に届き、王子は自らの行いを恥じた。ちょっと、斜めの方向に……。
「え!? これ、魔女殿の発明品じゃないのかい? え? 本物? 本物のおっぱい? ポ、ポニョン国のご婦人方のおっぱい!? え、ちょ、ちょっと待ってくれ! ぼ、僕は何て破廉恥なことを!?」
王子は恥じらい、顔を赤らめて狼狽えた。
手に持っていた饅頭をポトリと取り落とし、慌てて拾おうとして寸前でハッと手を止める。
攫われたイケメンたちの中で、ある意味一番の奇行種かと思われたが、ただの天然初心……いや、これはこれでやはり奇行種なのかもしれないが、それはそれとして。
ひとまず、王子の心身に問題はないと判断したサリは、速やかに魔女との次の交渉へと移行した。
攫われた王子とおまけのイケメンたちについては、熨斗をつけての返品が成立した。
となれば、次なる課題はおっぱい奪還である。
「それで、魔女よ。奪ったおっぱいを正しい持ち主の元へ戻してやることは可能なのか?」
「と~おぜん、ですわぁん! その辺に放置してあるのわぁん! もはや、不要なおっぱいですしぃん! 戻して差し上げてもかまわないのですけどぉん! 一つだけ条件がありますわぁん!」
「分かった。で、条件とは、なんだ?」
おっぱい返却は可能なようで、手に入れたばかりのおっぱいのユサユサ感を楽しみながら、条件付きで快諾した。
聞くまでもない条件の内容を、それでもサリは尋ねた。
後々の面倒を避けるためには、たとえ分かり切ったことだとしても、疎かにしてはならないのだ。
そもそもの発端が常軌を逸していたためか、公務よりも私事を優先させがちだった隊員たちも、ここにきて任務と立場を思い出したのか、固唾を呑んで成り行きを見守っていた。
といっても、余裕で予測できる魔女の条件とやらに注目しているわけではない。
隊員たちは、果たして隊長は魔女の条件に対してどう対処するつもりなのか、そこにのみ関心を寄せていた。