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第10話 おっぱいの多様性

 大広間では、多種多様なおっぱいクリーチャーたちが自由気ままに活動中だった。


 のっぺりした木彫り人体模型におっぱいが装着されていた。おっぱい人形は、甲斐甲斐しくとあるイケメンの世話を焼き、お茶やお菓子を給仕していた。イケメンは、黙って世話を焼いてくれる人形に癒しを感じているようだった。ほのかに甘いムードが漂っている。


 すね毛を生やしたおっさんっぽい足を生やしたおっぱい玉は、複数のイケメンたちに崇められていた。

 両手で抱えるくらいの球体の全面に、おっぱいが装着されている。

 頭も腕もなく足だけ生やしたおっぱい玉は、緩やかなリズムで体を揺らし、ぽよんぽよんがユサンユサンだった。

 その周りをイケメンが取り囲み、手を合わせてひたすら拝んでいる。

 新しい宗教が生まれてしまったようだ。


 手足を生やしたおっぱい饅頭が集まるエリアがあった。

 手を繋いで輪になって踊っている。

 二つ一組で手を繋ぎ、スキップしている饅頭もいた。微妙にサイズや質感が違うので、元々のペアではないようだ。

 これが盗まれたおっぱいでなければ、無邪気で楽しそうな光景だった。

 シルエットだけならば、ちょっと可愛いとすら思えた。


 きゃわきゃわと花を咲かせていた平原たちも、流石に言葉を失くしていた。

 他人ごとではない。

 自らのおっぱいごとなのだ。

 どの群れに属しているのが一番マシなんだろうか――――?

 探したいような、探したくないような、複雑な気持ちだった。

 加工されていないただの饅頭であってくれ――――と思ったが、加工前饅頭にも格差があった。

 饅頭は、床に散乱しているだけではなかったのだ。

 大広間の奥に、うず高く積み上げられた饅頭山が見えた。おっぱい山とも言える。

 当然のように、そこにダイブして埋もれているイケメンがいた。

 饅頭を掻き分けるように泳いでいるイケメンもいる。


 それまでずっと一緒にいたはずの右と左が分かたれて、それぞれ違う群れに属している可能性もあるんだよなぁ……と考えると、旅立ちかけていた魂が煤けていくように感じられた。

 いっそ、旅立たせておけばよかった…………と心底思った。


 そんな中、サリは旅立ちかけていた魂を鷲掴んで定位置に戻すと王子を探し、見事見つけ出し。

 ――――深いため息を吐いた。


「何をしていらっしゃるんですか? 王子……」

「あ、サリ! 見てくれ! おっぱいとは、実に素晴らしいものだな!」


 甘系イケメン王子は、爽やかな笑顔でサリに答えた。

 しかし、その姿はまったく爽やかではなかった。


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