大広間では、多種多様なおっぱいクリーチャーたちが自由気ままに活動中だった。
のっぺりした木彫り人体模型におっぱいが装着されていた。おっぱい人形は、甲斐甲斐しくとあるイケメンの世話を焼き、お茶やお菓子を給仕していた。イケメンは、黙って世話を焼いてくれる人形に癒しを感じているようだった。ほのかに甘いムードが漂っている。
すね毛を生やしたおっさんっぽい足を生やしたおっぱい玉は、複数のイケメンたちに崇められていた。
両手で抱えるくらいの球体の全面に、おっぱいが装着されている。
頭も腕もなく足だけ生やしたおっぱい玉は、緩やかなリズムで体を揺らし、ぽよんぽよんがユサンユサンだった。
その周りをイケメンが取り囲み、手を合わせてひたすら拝んでいる。
新しい宗教が生まれてしまったようだ。
手足を生やしたおっぱい饅頭が集まるエリアがあった。
手を繋いで輪になって踊っている。
二つ一組で手を繋ぎ、スキップしている饅頭もいた。微妙にサイズや質感が違うので、元々のペアではないようだ。
これが盗まれたおっぱいでなければ、無邪気で楽しそうな光景だった。
シルエットだけならば、ちょっと可愛いとすら思えた。
きゃわきゃわと花を咲かせていた平原たちも、流石に言葉を失くしていた。
他人ごとではない。
自らのおっぱいごとなのだ。
どの群れに属しているのが一番マシなんだろうか――――?
探したいような、探したくないような、複雑な気持ちだった。
加工されていないただの饅頭であってくれ――――と思ったが、加工前饅頭にも格差があった。
饅頭は、床に散乱しているだけではなかったのだ。
大広間の奥に、うず高く積み上げられた饅頭山が見えた。おっぱい山とも言える。
当然のように、そこにダイブして埋もれているイケメンがいた。
饅頭を掻き分けるように泳いでいるイケメンもいる。
それまでずっと一緒にいたはずの右と左が分かたれて、それぞれ違う群れに属している可能性もあるんだよなぁ……と考えると、旅立ちかけていた魂が煤けていくように感じられた。
いっそ、旅立たせておけばよかった…………と心底思った。
そんな中、サリは旅立ちかけていた魂を鷲掴んで定位置に戻すと王子を探し、見事見つけ出し。
――――深いため息を吐いた。
「何をしていらっしゃるんですか? 王子……」
「あ、サリ! 見てくれ! おっぱいとは、実に素晴らしいものだな!」
甘系イケメン王子は、爽やかな笑顔でサリに答えた。
しかし、その姿はまったく爽やかではなかった。