貧乳魔女の犯行声明は、王宮中にお届けされていた。
しかし、国王の耳には届いていなかった。
愛してやまない王妃のぱいんぱーんおっぱいが、綺麗さっぱりストンと消えてなくなってしまったからだ。
第三王女は極貧乳だったが、王妃はぱいんぱーんだった。王妃のぱいんぱいーんは、第一王女と第二王女にも受け継がれていた。第一王女と第二王女がぱいんぱいーんを吸い尽くしてしまったため、第三王女の分は無くなってしまったのだ……と王宮ではまことしやかに囁かれていたが、それはともかく。
王と王妃がそろって仲良く機能停止に陥ったため、第三王女はこれ幸いとその場を仕切り出した。
犯行声明が王宮中にお届けされていたことを承知の上で、大胆にもこう宣った。
「皆の者、聞くがよい! なんと、我が愛しの婚約者殿が、この国の行く末を憂い、盗まれたおっぱいを取り戻すために、単身で草原の魔女の元へと旅立ったのだ!」
単身も何も、護衛のイケメン二人も攫われていたのだが、どうせ端から捏造なのだから、この程度は些事だった。捏造をゴリ押すのならば、少しでも話が盛り上がった方がいいのだ。
集められた家臣たちは、真実を捻じ曲げた捏造宣言に当惑した。宣言したのが国王であれば、たとえそれが明らかな捏造であれ、王の言葉こそ真実と黙って従うところだが、当の国王は魂が行方不明の真っ最中なのだ。しかし、万事すり合わせ済みの隣国従者たちが黙って頷いているのを見ると、諸々をなんとなく察し、長きに巻かれることにした。
隣国側が王子を傷物にされた(?)とぶっこんでくれば、国際問題待ったなしなのだ。王女の方で、話をつけているということならば、一旦乗っておこう。後々問題に発展したら、すべては捏造言い出しっぺの王女のせいにしよう、そうしよう……と都合の良い判断をしたのだ。
「だが、我が国のおっぱい問題を王子だけに任せるわけにはいかない! よって、我が腹心である女騎士サリを部隊長として、おっぱい奪還部隊を編成し、直ちに派遣することとした! そう! 直ちに! 王子の性癖が歪められてしまう前に!」
かくして、速やかに部隊は編成され、旅立っていった。
なお、男たちは色めきだって鼻息も荒く部隊に志願したが、すげなく却下された。
なんか、イヤだったからだ。
こうして、国王の魂不在のまま、国王の名の元に御触れが出された。
ちなみに、王子のことは伏せられた。
冷静になって考えてみると、おっぱい奪還のために単身で旅立つ……というのは美談のようでいて美談ではないと気づいてしまったからである。
――それって、ただの“おっぱい目当て”じゃない?
そんな悪評が立ったら、それはそれで火種である。
そんなわけで、王子については緘口令が敷かれた。