食器とカトラリーが触れるほんの僅かな音と、小鈴の音に似た可憐な笑い声が
「それでね、お父様。桜子さんったら、『お菓子を頬張る姿が
ぷりぷりと怒りながら朝食のオムレツを頬張る姿が、まさに『栗鼠』そのもので、父と母は顔を見合わせて吹き出した。其れに驚いて手を止めた絹依は、含み笑う両親を見て怪訝な顔をする。
「……お二人とも、どうしてお笑いになるの? わたくしは怒っておりますのよ?」
気分を逆なでされた気がして気を害した絹依は、付け合わせのチェリートマトに、怒りのままフォークを突き立てた。
「……妻よ」
「ええ、旦那様」
「あれは栗鼠だね」
「ええ、立派な栗鼠ですわね」
神妙な面持ちで頷き合う両親を見て、絹依はもぐもぐと口を動かしながら、こてんと首を
本日、高等女学校は休みである。天気も良いので、
――きっと、花の世話をしている間に、気分も良くなることだろう。
絹依がさっそく身支度をして庭園に向かおうとしたところで、父に呼び止められた。予定が決まったことで気分良くなっていた絹依は、機嫌良く後ろを振り向いた。父はナプキンで口元を拭くと椅子から立ち上がる。――どうやらこれから出掛けるようだ。
「絹依。庭園に行くのだろう? 私もこれから外出するんだよ。玄関まで一緒に行こう」
「あら、お父様。こんなに朝早くからどちらに?」
聞けば、以前から話題に上がっていた、傍系の男児を迎えに行くのだという。ここ数日、執事長や
「麻生家は帝都の外れにある。行って戻って来る頃には昼になっているだろう」
「でしたら、土いじりをしてもよろしいの?」
「ああ。せっかくの休日だ。有意義に過ごしなさい」
父の言葉に、絹依はぴょんと飛び跳ねて、トトトと食堂を後にした。その後ろをゆったりとした足取りで父が追いかけてくる。絹依は
「……どうなさったの、お父様? 何か問題がある子なんですの?」
「お前は根が真っ直ぐな子だから心配していないのだが、今日迎えに行く子は
「まあ……なんて酷い。その子に罪は無いではありませんか!」
「……お前なら、そう言ってくれると思っていたよ」
客間で
絹依は母と父の車を見送ったのち、胸中にモヤモヤとした不快な気持ちが渦巻いているのを感じていた。絹依の様子を心配した母に、絹枝は父から聞いたことを包み隠さず話したが、其れは母も知っている情報であった。
「『可哀想な子』として接するのは、失礼にあたるでしょうからね。今まで辛い思いをしてきた分、吾桑家では温かく迎えてあげましょう」
「お母様のおっしゃる通りね。……あっ! ねえ、お母様! こういうお迎えの仕方はいかがかしら? 喜んでもらえると思いまして?」
絹依が母に提案した内容は、実に絹依らしく、真心がこもった物であった。母は、絹依の真っ直ぐで優しい性分を誇らしく思いながら、