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第8話 国家魔術師

「ギャァァァァァッ!!」


 魔鳥獣がけたたましく悲鳴を上げる。

 誰かが攻撃したのか?

 さらに次の瞬間。


 ズガァァァァァッ!!


 何処から激烈に発射された光線が魔鳥獣の巨体を壮絶に貫通。


「ギャァァァァァァ......」


 断末魔の叫びとともに魔鳥獣プテラスキングは黒いちりとなって、サァァァ......と砂のように空へ飛散していった。


「魔鳥獣が、死んだ......」



 衝撃の光景に茫然と立ち尽くしていると......。



「なんとか間にあったなっ!」


 突然、俺たちの前に何者かがバッと着地した。


「エトケテラ狙いで来たのに、まさかプテラスキングに出くわすとはな〜」


 颯爽さっそうと現れたのは、でっかいライフルたずさえた、紫髪をなびかせる冒険者風の女性。

 彼女はゴーグルを外すと、肩に白兎を乗せた八十神に視線を投げてきた。


「さっきのとんでもない魔法は誰がやったのかなぁ?」


「あ、ええと......」


 八十神はしとろもどろになってしまう。

 が、すぐに横から村長が乗りだしてくる。


「あ、あなたは国家魔術師ですね!?」


 彼女はニヤッと笑った。


「アタシは国家魔術師レース・マグスのジェット・リボルバーだ」


「ジェット・リボルバー?......ま、まさか、ジェットレディですか!?あのコランダムクラスの国家魔術師レース・マグスのジェット様ですか!?」


「ハッハッハ!こんな田舎の島でも知られてんのか!アタシもすっかり有名になっちゃったんだな〜!あ、田舎ってのは別に悪い意味じゃないぞ?」


 ジェットと名乗る女性は陽気に答えると、再び八十神のことをじろっと見た。


「少年。さっきの魔法はキミがやったんだろ?」


 今度こそちゃんと答えなきゃ、と口をひらこうとした八十神の肩に、ぴょんとイナバが乗ってくる。


「そうだぞ!ジェット女史!先ほどの魔法はこの八十神少年がやったのじゃ!」


「お、おいイナバ!なんでお前が答えるんだよ!」


「お主がおどおどしとるからじゃ!」


「今からちゃんと答えるところだったんだよ!」


 ここで不意に八十神は「?」となる。

 ジェットと名乗る女性がイナバを見て、あっと驚きの表情を浮かべていたから。


「それは使い魔か?召喚獣?いや違う。さっきの魔法......そうか!神使か!」


「は、はい。そうです」


「なるほど!キミは神の道に通づる魔法を行使するんだな!実際に見たことはなかったが文献や伝承で聞いたことはあるぞ!」


 ジェットは八十神の両肩をガシッとつかみ、紫色の瞳を丸くした。

 どうやら興味津々で興奮しているようだ。

 思わず八十神は恥ずかしくなって視線を下げると、凝視してしまう。

 豊かな胸を。


「いや〜まさかこんな所であんなものを見られるとは!」


 相変わらず興奮するジェット。

 ぶるんぶるん揺れる胸。

 八十神の健全な青少年の心が、しかと噛み締める。

 この人、マジで美人お姉さんだ。

 しかもスタイル抜群だし。

 こういうのを、エロカッコイイって言うのかな。


「おい小僧。何を見ておる」


「なっ!なにも見てない!」


 イナバの余計な一言で現実に引き戻された八十神は、思わずジェットお姉さんの腕をバッと払った。


「あ、あの!貴女がプテラスキングを倒してくれたんですよね!?ありがとうございました!」


 八十神は誤魔化すように勢いよく頭を下げて感謝を伝えた。


「いいっていいって。アタシは自分の仕事をしただけだ。それにな?少年」


「はい?」


「島の人々を守れたのは少年のおかげだぜ?」


「えっ??」


「少年の魔法がなかったら、プテラスキングの攻撃までにアタシは間に合わなかった。少年のおかげで誰ひとり死なずに済んだんだ」


「そ、それって、ただの時間稼ぎだったってことですよね...」


時間稼ぎだ!誇っていいぞ!」


 ジェットは快活にニカッと笑った。

 この時、八十神の胸は急に熱くなる。

 自分の魔法が役に立ったんだ、と。

 ダメダメだった俺が、人の命を守ったんだ......!


「よ、良かった......」


「ところで少年。名は?」


「お、俺は、八十神天従やそがみたかつぐです!」


「......ヤソガミくんか。歳は?」


「十五歳です」


「ふーん、オモシロイね〜」


「オイラは神使の白兎、イナバじゃ!歳は...忘れたわ!」


 ついでにイナバも自己紹介すると、ジェットお姉さんはアハッと笑ってから、目に何やら策謀さくぼうに満ちた色を浮かべる。


「ちーなーみーに、ヤソガミくんは、野良のらの魔術師だろ?」


「えっ」


「図星だな。そりゃそーだ。その歳でこの時期に学校にも行かずこんな所にいる時点でな」


 ジェットは不敵にニヤリとした。


「......よし。ヤソガミくん。リュケイオン魔法学園に来い!」


「へっ??」


「いわゆるスカウトってやつだな!まっ、心配すんな!アタシはそこのOGだ!理事長はアタシのよく知っている人だ!このアタシがゴリ推せばなんとかなるさ!」


「えええ!?」


 まさかの千載一遇せんざいいちぐうのチャンスは、突如として訪れたのだった。

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