「俺、どうなるんだ。なにがなんだかさっぱりわからない......」
いきなり猟師に撃たれて、目が覚めた八十神がいたのは、牢屋の中だった。
とりあえず生きてはいる。
麻酔銃で撃たれたのだろうか。
目立った怪我はしていない。
殺されなくて良かった。
なんてそういう問題じゃない。
そもそも現代の日本で、いきなり猟銃に撃たれるなんてことあるのか?
人権侵害にもほどがあるぞ!
「俺は人里におりてきた熊か!」
今さらツッコミを入れてもしょうがない。
いったん冷静になろうと、八十神は無理矢理にでも心を落ち着かせようとした。
冷静になって、現状とこれからどうするかを、まずはしっかり考えるべきだ。
「......
どう考えてもヤバかった。
いや落ち着け。
八十神は深呼吸する。
とにかく、無実の罪だということを訴えるしかない。
きっとわかってくれるはずだ。
「......わかってもらえなかったら?」
そもそもいきなり撃たれている時点で普通じゃない。
話せばわかるとかそういう次元ではないのかもしれない。
「逃げるか......?」
でもその方法が思い浮かばない。
ああクソッ。
考えれば考えるほど絶望する!
「おい少年」
「......」
「そこの少年」
「......」
「そこの中肉中背の黒髪の制服姿の少年。お主じゃ!」
八十神はびくんとした。
誰かが、俺のことを呼んでいる?
だが、まわりに人の姿は見受けられない。
「視線をさげろ!バカモノ!」
「視線をさげろ?......えっ?」
「オイラが見えたか?少年」
「う、ウサギがしゃべってる!?」
「なんじゃ。兎が喋っちゃ悪いのか」
なんだこれは?夢でも見ているのか?
八十神は目をこすって頬をつねった。
「悩んでおるのぉ〜若いってええのぉ〜」
視線の先に、ニヤニヤした
えっ、なにこれ、ヤバい。
「キモっ!!」
「誰がキモイじゃ!失敬な!」
「兎が喋ってるとかマジできしょっ!」
「このタワケがぁ!!」
白兎が、ウガーッと八十神の顔に飛びかかってきた。
「ちょっ!痛い痛い痛い!」
「こんなにラブリーでプリティーなオイラにむかってキショイとはなんじゃあ!謝罪して撤回せんかぁ!」
「わかったわかったわかったわかった!謝ります謝ります!撤回します撤回します!ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいっ!」
「わかればよい」
白兎はパッと八十神から離れてスタッと床へ着地した。
「まったく最近の若いモンは」
「あ、あの、ええと」
「まあ今はまだ混乱しているじゃろうから大目に見てやるが」
「は、はあ」
「だがオイラが来たからにはもう安心せい!
「ええ!?俺のこと、知っているの!?」
「もちろんじゃ!いいか?今から簡単に今のお主の状況を教えてやる」
「お、教えてくれ!!」
「むっふっふ。よく聞け!お主はなぁ?」
「う、うん」
「転移したのじゃ!!」
「てんい?てんいって...転移!?」
「そして選ばれし八十神天従は、我が国〔オリエンス〕の救世主となるのじゃ!」
「救世主!?てゆーかここ日本じゃないの!?はあ!?」
「以上じゃ」
「なーるほど......てわかるかぁー!簡単すぎだわ!!」