「いい天気だなぁ」
朝陽がまぶしい。
気温もあたたかい。
高校生活第一歩となる日として、幸先の良いスタートが切れそうだ。
「あっ、せっかくだから
実家が神社なのは、こういう時は便利だ。
といっても、
ましてや自分んちの神社なんかなおさらだ。
けど、今日は特別だった。
「高校生活が、素晴らしいものとなりますように」
ガラにもないお祈りだったが、八十神はかなり本気だ。
「ちゃんと友達ができますように」
ず〜っとぼっちだった中学時代。
色のない中学校生活。
もうあんな日々は繰り返したくない。
あのとき失ってしまった青春を...高校で取り戻したい。
八十神は心の底から強く願った。
「もしできるなら、カワイイ彼女も......」
望みすぎるのは、良くないかもしれない。
「......」
目を閉じて手を合わせ、お祈りしていると......。
突然、八十神はまぶたの外からなにか強い光を感じた。
「なんだろ?」
何かと思い目を開くと......前後左右に上下の空間すべてが、神々しいまでの強烈な白光に覆われていた!
もはや
というより光以外になにも見えない。
「なっ、なんなんだ!?」
眩しすぎて再び目をつぶり、両腕で顔を覆った。
「......」
何秒経ったかわからない。
たいした時間は経っていないはず。
体感としては一瞬だった。
「光が......やんだ??」
そ〜っと瞼をひらき、腕をさげる。
「えっ??」
八十神はびっくり仰天する。
「こ、ここどこ!?」
なんと、自分の立っている場所が、神社の拝殿ではなく森の中だったのだ。
「ど、どういうことなんだ??」
もう何時間も歩いていた。
ここがどこかもわからない。
いくら歩いても森から抜けられない。
なぜかスマホの電源は入らなくなってしまっていて、今が何時かもわからない。
「クソッ!時計してくれば時間ぐらいはわかったのに!」
まったくなんなんだ!
高校生活初日に神隠し?
フザけんな!
なんでこんな目に
八十神の心は言いようのない怒りと悔しさにあふれる。
だが、それも時間の問題だった。
「このまま、遭難したらどうなるんだろう」
にわかに強烈な不安が八十神を支配した。
いや違う。
不安はずっと不安だったが、その不安がいよいよ現実味を帯びてきたと言ったほうがいい。
「え、待って。俺...死ぬ??」
足が止まる。
膝がガクガクと震えてくる。
「やばいやばいやばいやばい......」
イヤだ。イヤだ。
イヤだイヤだイヤだイヤだ。
まだ死にたくない......と、その場でうずくまって頭を抱えた時だった。
「オイ!そこにいるのは誰だ!」
突如、八十神に向かって人の声が飛んできた。
反射的に助けてもらえると思った八十神は、バッと立ち上がって振り向いて力いっぱい叫んだ。
「あ、あの!たたた助けてください!!」
「いいからこちらの質問に答えろ!お前は何者だ!?」
「え?あ、あの、た、助けて...」
「それともおれが見たことないだけで島の者なのか!?名前を名乗れ!!」
森の影から姿を現したのは、猟師らしき人だった。
でも、何か様子がおかしい。
その者は八十神に向けて猟銃を構えている。
「お、俺の名前、ですか??」
「はやく名乗れ!!」
「やそがみ......
「ヤソガミ...だと!?」
「は、はい!?八十神です!?」
「この......無礼者がぁ!!」
「へっ??」
「ヤソガミとは、この島...ヤソジマで信仰される多神教の神々の総称!そのヤソガミを名乗るとはキサマぁ!!」
「え?え?え?」
「怪しいヤツめ!!」
カチャッと銃口が定められた。
えっ、俺、殺される!?
八十神がそう思った時はもう遅かった。
「ちょっ、待って...」
バーン!!