私はこんな夜更けに部屋を訪ねてくるなんて誰だろうと思いました。
警戒しつつ「あ、あの……どちら様でしょうか?」と言ってみました。
すると「マ、マルフィスです……だ……」とのお返事でした。
マルフィス……?
……あっ。魔王様じゃないですか。
そう気づいた私は部屋の扉を開けようとしましたが───。
(ならぬ!!! 扉をあけるな!)
「───っ!!!」
急にお母様が大きな声で私を制しました。
「えっ? ええっ? あ、あの、お母様。扉を開けては駄目なんですか?」
(駄目じゃ! 魔王がこんな夜更けに母の部屋になんの用があるというのじゃ! 絶対に……うっ……ぜ、絶対に……う、うぅ……)
お母様が苦しそうなので私は心配しました。
「だ、大丈夫ですか、お母様? 倒れられたばかりですし大きな声を出すなど無理をなさらないほうが……」
(う……ぐっ……口惜しや……。残念ながら
よいか……! 魔王を部屋に入れるな……! お、追い返すのじゃ……!)
そういってお母様は倒れるように眠られたようです。