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007話 異世界転生で魔王のお母様に会う(07)

「えっと……。すみません、ちょっと理解が追いついていないところがあって幾つか質問したいのですが、宜しいでしょうか?」


「宜しくない!!! 時間がないのじゃ! つべこべ言わず、さっさとわらわとなって魔界に行くのじゃ!」


「───っ!!! は、はいっ! 失礼しましたっ! では不肖ふしょう杵築 心優きづき こころっ! 魔界に行ってお母様となり、魔王様のお世話をして参りますっ!」


 先ほど「」なんて言ってすみませんでした。


 少し……いえ、かなり思っていた異世界転生とは違うようです。

 私はどうなってしまうのでしょうか……?


 魔界行きを了承した私はにわかに落下するような浮遊感を覚えました。

 それと同時に視界が狭くなり、意識が遠のき始めました。

 私が完全に意識を失う直前に、お母様が何かを叫んでおられたように思います。


「よいか! 魔界の3人の王子! 奴らにだけは気をつけるのじゃぞ! 何せ奴らは□□□の事を□□□□より□□じゃからじゃ! 決して□□するでないぞ!」


 最後の方の言葉は聞こえたような聞こえなかったような……そんな感じで詳細を記憶できませんでした。

 とにかく魔界には3人の王子がおられるということだけは認識することができました。


 私は眠りにつくかのように意識を手放しました。


 どのくらい意識を失っていたのかわかりませんが、私が目を覚ますと、3人の若い男性が私の顔を覗き込んでいました。


「目が覚めたか」


「大丈夫っ!?」


「気分はどうです? どこか痛みますか?」


「こ、ここは……?」


「意識が朦朧としているな」


「ここは魔王の城の謁見の間だよ」


「記憶が定かじゃないみたいですが、今は無理に思い出そうとしなくていいですからね」


 代わる代わる何かを言われましたが、私は状況を確認すべく上体を起こしました。


 私の目の前には赤髪の精悍そうな青年がいて、私の眼を真正面から見据えていました。

 その左には金髪の優しそうな顔立ちをした糸目の青年がおられ、そして反対の右側には人懐っこそうな笑顔の黒髪の青年がおられました。そして皆一様に私の顔を覗き込んでいました。


「あ、あの、先ほどここが魔王の城と仰いましたでしょうか───うみゅ?」


 私が口を開くと赤髪の精悍そうな青年が人差し指と親指で私の顎を挟み、頬をキュッと摘みました。そうされると口が自ずとアヒル口になってしまいます。その為「うみゅ?」などという間抜けな声が漏れてしまいました。


「他を見るな。俺の眼を見ろ。俺の眼だけ見ていればいい」


 赤髪の精悍そうな青年はそう言って私の顎をクイッとあげました。

 そしてじっと私の眼を見つめました。


「ふむ。瞳に曇りはないな。何かの呪いではなさそうだ」


 まさかの人生初「顎クイ」でした。


 驚きましたが、なるほど……確かにこれは悪くありませんね。力強く、少し乱暴な扱いに不快感を覚えるかと思いましたが、意外にも嬉しく思うような感覚を覚えてしまいました。

 例えるなら、子供の頃、父親に「たかいたかーい」や「ひこうきごっこ」をしてもらっているような感覚でした。自分では決して抗えない大きくて力強い相手ですが、信頼感があり、そんな相手に翻弄してもらっているというスリルと喜びが混在するような感覚です。

 「顎クイ」とは奥が深いものだと認識しました。これは「壁ドン」や「お姫様抱っこ」もそのようなものなのかもしれないと楽しみになりました。


「あ、あの、私はここで意識を失って───うみゅ?」


 私が喋ろうとすると、今度は黒髪の人懐っこそうな笑顔の青年が飛びついてきました。

 そしてくっついてしまうかと思う程、頬と頬をギュッとされてしまいました。そうされると自ずと口が数字の「3」のような形になってしまいます。その為、またもや私は「うみゅ?」などという間抜けな声を漏らしてしまいました。


「よかったー! 急に倒れるんだもんっ! びっくりしたよっ!

 香りはどう? くんくん───ふんすふんす───。

 うん。香りは大丈夫。いつもと同じでとてもいい香りがするよ!」


「倒れた? 香り? あの私はいったい───うみゅ?」


 今度は金髪の優しそうな顔立ちをした糸目の青年です。

 そっと人差し指を私の唇にあて、言葉を遮りました。

 優しく一押しされただけでしたが、不意をつかれてしまい、私はまたもや「うみゅ?」と漏らしてしまいました。


「今は無理に喋らなくていいんですよ。静かにして額をこちらに向けてください」


 金髪の優しそうな顔立ちをした糸目の青年は私の前髪をかきあげると顔を近づけ、自分の額と私の額をくっつけました。

 一瞬のことで私は何もできず、身動き一つせず彼を受け入れてしまいました。


「うん。熱はなさそう。額は熱くないですね。

 ……あれ? でも顔が真っ赤ですね。やっぱり熱があるのかな?」


 これは貴方の顔が、文字通り額がくっつくほど近かったからです。




 ✿.*.。.:*:.。.ꕤ.。.:*:.。.*.✿


【後書き】


 柳アトムです。ここまで私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。

 ( ᵕᴗᵕ )ウレシイデス


 「異世界転生で魔王のお母様に会う」はどうでしたでしょうか?


 異世界に転生して3人の王子に出会うまでを書きましたが、3人の王子にも興味を持っていただけたら嬉しいです。


 そして魔王様ですが、こちらは次話でいよいよ登場します。

 乞うご期待いただけますと幸いです。

 ( ᵕᴗᵕ )


 この後も皆様に「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります。

 ( *˙ω˙*)و


 引き続き宜しくお願い致します~!


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