フィナーレは満月の夜に。
あたしたちの決着には、こんな月明かりの下がふさわしい。
彼女のまとった真紅のマントが夜風になびく。
上下紺色のジャージに包んだ身体に、闘志と力がみなぎっていく。
仁王立ちの両足が踏みしめているのは高層ビルの屋上。
地上二十二階の
そんな広々とした空間で、みくにはひとりの男と対峙していた。
月光のスポットライトを受けたみくにとは対照的に、男は夜の影に潜むように佇んでいる。
細身の身体に高級ブランドのスーツを着こなし、上品に整えられた髪先が、時折黒い炎のように風に揺らめく。
冷たく憂いを帯びた眼光。そのきらめきに似た巨大な刃が彼の手に握られていた。
まるで死神の鎌のような大きさと禍々しさだ。
ふたりの視線が静かに火花を散らす中、みくにはおもむろに口を開いた。
「あたし、あなたが好き! 付き合おう!」
緊張高まる空気の中で、みくにの告白は攻撃の先手となって男に飛んだ。
が、男はわずかに肩をすくめ、その言葉を無感情にかわす。
「愚かなおまえは、まだそんなことを言うのか。もう九十九回目だ」
「やだ、うれしい! 数えててくれたんだ!」
頬を染めたみくにに、男は一瞬しまったとでも言うように顔をしかめた。
けれどすぐに大鎌を振りおろすと、その切っ先は足元のコンクリートに突き刺さった。
「いいかげんにしろ、広小路みくに!」
男の端正な顔が怒りにゆがむ。
「僕はこの世界を創りかえ、新世界の頂天に立つ! それが使命であり運命だ! その妨げになるおまえは排除しなければならない!」
激しく冷酷に響き渡る男の声を、みくには仁王立ちのまま受け止めた。
「王崎商事副社長、王崎
拓真は呆れたように息を吐いた。
「いつまでそんな幻想を――」
「見くびらないで! あたしの愛を!」
みくには高らかに告げ、両拳を固く握ったまま足を踏みだした。
「広小路みくに、三十五歳! あなたを好きになって三十年!
夜空の月がひときわ燦然と光を放つ。ジャージにマント姿のみくにを、神々しく照らした。
「王崎拓真への、
みくにの口上は、夜の静寂を粉砕し、拓真を強烈に打ち叩く。
けれど拓真は大鎌を振り上げ、苛立ちあらわに、みくにへ向かって歩を進めた。
「黙れ! 卑しき神々の手先め!」
「黙らない! あたしはあなたが好きだから! あなたの野望も苦悩も悲哀も――!」
駆けだしながら、みくにが拳を振り上げる。
「そのすべて、あたしの
フィナーレは満月の夜に。
そうだ、今宵、すべてを終わらせ、そして叶えるんだ。
三十年に及ぶ、愛の軌跡の終着点――ハッピーエンドを。
広小路みくには決意を秘め、全身全霊の愛を拳に込める。
これが!
あたしの愛の!!
ありったけ!!!
月明かりの静寂の中――。
たったふたつの影が人知れず夜を裂き、その信念と使命と想いを武器に、ついに激しく交錯した。