さて、不慮の事故でポーションを1個消費してしまったが、俺たちは格上と思われる魔物を倒すことが出来た。
そして――
『職業【ゾウアザラシ】のステータスがドロップしました。
職業【ゾウアザラシ】のステータスをステータスインベントリへ保存します』
無事新しいステータスをゲットすることが出来た。
「ゾウアザラシのステータスをオープン」
『職業【ゾウアザラシ】のステータスを表示します』
名前 NO NAME
職業 ゾウアザラシ
レベル 42
HP 920/ 920
MP 500/ 500
STR 110 DEF 88
INT 51 DEX 30
AGI 72 LUK 60
【固有スキル】
突進
【スキル】
対物理防御(小)
対衝撃耐性(小)
加速力上昇(小)
おお、やっぱりコモドオオワームよりも強かったか。
でも、あの時みたいに死にかけなかったのは、俺たちのレベルが上がっていたからだろう。
少なくとも、当時のトリュフさんクラスにはなっているはずだ。
そして今回はスキルが3つもあった。
耐衝撃耐性は敵からの攻撃ではなく、何かにぶつかった時や落下時に効果があるらしい。
で、ついに念願の対物理防御スキル持ちに会うことが出来たのだ。
俊敏性(小)と(極小)の時は、進化させるのにコスト不足と言われた。
それからずっと俊敏性(極小)を持っていそうな魔物を捜していたけれど、今日まで出会うことはなかった。
しかし!!同じ(小)ならどうだ?
俺は期待を込めて――
「ゾウアザラシのステータスを装備」
そして、祈るような気持ちでそう言った。
『召喚者ソノダ・タイセイは職業【ゾウアザラシ】のステータスをサブ職業スロットに装備しました。
職業【ゾウアザラシ】を装備したことで、各種ステータスが上昇しました。
職業【ゾウアザラシ】のスキル、「対物理防御(小)」はすでに装備している為、これを装備することは出来ません。
スキル「対衝撃耐性(小)」をスキル装備スロットへ装備しました。
スキル「加速力上昇(小)」をスキル装備スロットへ装備しました。
スキル「対物理防御(小)」を使用して、スキル「対物理防御(小)を進化しますか?YES/NO』
「……YES」
『スキル「対物理防御(小)を代償として、スキル「対物理防御(小)の進化を開始します。
必要なコストを確認しました。
合成、進化を開始します。
成功しました。
スキル「対物理防御(小)」は進化により、スキル「対物理無効(小)」へと進化しました』
全てのデータ移行が終了しましたので、職業【ゾウアザラシ】のステータスは廃棄されます』
……やった。
ついに進化に成功したぞ。
でも、物理無効って何だ?
全然効かなくなるなら(小)って?
『スキル「対物理無効」は戦闘中のダメージを一定数無効にします』
あ、ありがとう。
なるほどね。無敵になるわけじゃないのか。
どれくらいのダメージまで無効に出来るのか分からないから、いきなり無理は出来ないな。
「タイセイさん、終わりましたよ」
あ、タマちゃんが何してたかって?
嬉々としてゾウアザラシの牙をギコギコと剣で斬り落としてたよ。
討伐証明になるだけじゃなくて、かなりの高額で買い取ってくれるらしい。
で、その牙2本を両肩にかけて歩いてきた。
1本でもかなり重いと思うのだが、さっきの戦いでタマちゃんもレベルアップした事で力が上がっているようだ。
「これを持って進むのは難しいので、今日は一旦街に戻りましょう」
「だね。俺も1本持つよ」
「あれ?タイセイさん。何か顔がにやけてますけど…」
そう?タマちゃんの顔の方がとろけそうな顔してるよ?
これ、そんなに高く売れるの?
「まあ、理由は帰りながら話すよ」
そうして俺たちはその日の野営を止めて街へ引き返すことにした。
途中、スキルが進化した事を伝えると――
「……ダメージを無効。タイセイさんがどんどん人間を辞めていきます……」
お、タマちゃんの中では、俺はまだ人間サイドだったんだ。
陽が傾きかけた頃。俺たちは王都に戻ってくることが出来た。
街の中だけではなく、城壁の外にも出店が並び、まだ多くの人たちが騒いでいるのが見えた。
照明の準備をしている人たちがいるので、おそらくは夜もこの祭りは続くんだろう。
そんな人たちの好奇の視線を浴びながら城門へと着いた。
収穫祭の開催中はギルドの出張営業所が簡易的に城門脇に作られている。
簡易とは言っても、小さな一戸建てくらいのサイズはある。
その建物の表に受付用のカウンターが設置されている。
参加者はそこで倒した魔物を記録していくのだ。
その受付に向かって歩いているのだが、すでに受付をしている女の人がカウンターから身を乗り出すようにしてこちらを見ている。
「Eランクのタイセイとタマキです。ゾウアザラシの討伐部位を持ってきました」
身を乗り出していた金髪のお姉さんにそう告げると――
「ゾウアザラシ……Cランクの魔物……。これをあなたたちが?2人で?Eランクなのに?本当に?」
そんなに疑問符つけなくても良くない?
疑う気持ちは分からんでもないけど。
「はい。俺たち二人で倒しました」
「買い取りお願いします!!」
早い早い。
先に収穫祭としての記録してもらってからね。
「分かりました……。まあ、あなたたちならやりかねないですか」
あれ?どういう意味かな?
「トワリューフ様と一緒にコモドオオワームを倒してますものね」
ああ、そういうことね。
ギルド内で異端扱いされてるのかと思った。
「それで、これはギルドで買い取らせてもらうということでよろしいんで――」
「はい!!」
かなり食い気味でタマちゃんが受付のお姉さんに詰め寄る。
「分かりました。すぐに算定して参りますので少々お待ちください」
そう言うとお姉さんは建物の中へ入っていった。
「あの……タイセイさん……」
「ん?どしたの?借りてきた猫みたいに急に大人しくなって?」
「私はレンタルされてません!!」
あ、いや、その猫じゃなくてね。
「牙を売ったお金なんですけど……今回って、ほとんどタイセイさんが倒したようなもんじゃないですか……それで…あの……私……」
「ああ、全部タマちゃんが取って良いよ?」
俺は別にお金に困ってないし。
「え!?いや!そんな!!私はすこーしだけ分けてもらえないかな?って思っただけです!!どれだけの金額になるか分かってるんですか!?」
「これで借金返せそう?」
まずはパーティーとして身辺を綺麗にしておきたいから。
「そりゃ返せますよ!!全部返してもお釣りがどっさりときます!!」
「じゃあそれで」
「軽っ!!大金の扱いが軽すぎる!!」
タマちゃんの普通のツッコミって新鮮だな。
うん、これだけでも牙の代金分の価値があった。
「……本当に良いんですか?」
タマちゃんが上目遣いでこちらを見てくる。
「お釣りを無駄遣いしないならね」
「タイセイさん大好き!!」
タマちゃんが俺の首に手を回すように抱き着いてきた。
おふっ!!こっちもどっさりとお釣りがきたぞー!!
ゾウアザラシありがとー!!
「よかった……来週末に大きなレースがあったんですよ……」
抱き着かれた興奮であっちの世界に飛んでいた俺には、タマちゃんが耳元で呟いたその言葉は聞こえていなかった。
タマちゃんにとって競ンバに使うお金が無駄遣いに入らないという認識であるのを、顔を真っ赤にして目を泳がせている俺が知るのはまだ先の話なのだ。