「ねえ、タマちゃん」
「キャアー!!なんで急に元気になってるんですか!?今まで死にそうになってたのに!!まだ薬草すら使ってないんですよ!!」
「レベルアップしたからじゃない?」
レベルアップで全回復って便利だよね。
最近のゲームでは減ってきてるけど、プレイヤーとしては助かる機能。
「レベルアップで怪我が治るとか聞いたことないです!!」
え?そうなの?
でも、回復したよ?
「それに、まだスライムを倒してもいないのに、何でレベルアップしたんですか!?むしろスライムの方があと少しでレベルアップしかけてましたけど!?」
俺を倒したらどれくらい経験値貰えるんだろうか?
「ステータスを初めて装備したファーストボーナスで経験値貰ったからかな?」
「タイセイさん……何を言っているんですか?」
ほんと、俺は何言ってるんだろうね。
誰か教えてくれ。
タマちゃんも、そんな可哀そうな人を見る目で見ないで。
「よく分からないけど――多分、さっきよりは強くなってるんだと思う」
各種ステータスが上昇したって言ってたし。
「私にはタイセイさんが何を言っているのかよく分からないんですけど……」
「言ってる俺は全然分かってないから大丈夫」
でも、感覚的にさっきまでとは違うっていうのは分かっている。
あとはそれがどんなもんかって事なんだけど。
「ぽよん♪ぽよん♪」
スライムがぽよんぽよん言いながらこちらへ向かって……言いながら?
あれ、鳴き声だったの!?
そして、またもや俺の胸へ向かって跳んできた。
どうやら、これはスライムの攻撃だったらしい。
「タイセイさん!!」
さっきの惨劇を見ていたタマちゃんが叫ぶ。
しかし、今回は吹き飛ばされること無く、しっかりと両腕で受け止めた。
「え?タイセイさん!?」
「ぽ?ぽよん!?」
どうも顔があるように思えて仕方ないな。
「スライム、俺を甘くみたな。『男子、三日会わざれば刮目して見よ』、だ!!」
「タイセイさん、まだスライムと出会って2、3分しか経っていませんよ!!」
「くらえスライム!!――必殺!!キャッチ!!あーんど、シュートォォォ!!」
ゴールキーパーよろしく、俺は捕まえていたスライムを思いっきり蹴り飛ばした。
「ぷよーん!?――ぐえ!!」
……なんかエグイ声聞こえた。
飛んで行ったスライムは、最期の断末魔?を上げて、空中で派手に爆発四散した。
……スライムとの戦闘シーンて、こんな感じだっけか?
「え……?タイセイさん?」
タマちゃんが呆然とした顔でスライムの飛び散った空間を見つめている。
さっきまでスライムに殺されかけてたのに、急に勝ったらそりゃ驚くよね。
しかも、物理攻撃に耐性があるって言ってた敵を蹴って倒したし。
「ね、強くなってたで――」
その時、ナビの声が聞こえてきた。
『スライムを倒しました。
経験値5を手に入れました』
スライムだけに経験値しょぼいな。
『職業【スライム】のステータスがドロップしました。
職業【スライム】のステータスをステータスインベントリへ保存します』
今なんて言った?
『職業【スライム】のステータスがドロップしました。
職業【スライム】のステータスをステータスインベントリへ保存します』
あ、やっぱり、聞いたら答えてくれるんだ。
「職業【スライム】?――の、ステータス?――を、ドロップぅぅ??」
「タイセイさんが壊れたあぁぁぁ!!」
違うぞタマちゃん!!壊れているのはこの世界のシステムだ!!
『職業【スライム】のステータスはステータスインベントリ内にあります』
あ、今言ったので音声認識したのね。
『職業【スライム】のステータスを装備しますか?YES/YES』
ん?選択肢おかしくね?
俺の拒否権は?
「……NO」
『………』
「NO」
『………』
「ノオォォォー!!」
そんなわけの分からないもの装備してたまるかー!!
『……入力エラーが発生しました。
正しい選択肢を5秒以内に選択しない場合は、肉体が原子レベルの塵へと分解されます』
「YES!イエス!イエーーース!!」
これってどこに訴えたら勝てる?
『召喚者ソノダ・タイセイは職業【スライム】のステータスをサブ職業スロットに装備しました。
職業【スライム】を装備したことで、各種ステータスが上昇しました。
職業【スライム】のスキル、「対物理防御(極小)」を獲得しました。
スキル「対物理防御(極小)」をスキル装備スロットへ装備しました。
称号「マルマールの使徒」の効果により、スキル「対物理防御(極小)」は「対物理防御(小)」へと進化しました。
全てのデータ移行が終了しましたので、職業【スライム】のステータスは廃棄されます』
えっと、さっきから全然理解が追い付かないんだけど……。
とりあえず、スライムになるという訳ではないんだな。
元のステータスは廃棄されたみたいだし。
ステータスが廃棄って何だ?
でも、スキルは覚えられないんじゃなかったの?
『スキル「対物理防御(極小)」をスキル装備スロットへ装備しました』
説明ありがとう。
覚えたんじゃなくて、装備したのね。
つっこまないよ?
今はそれどころじゃないからね。
「タイセイさん……。もう、もう頑張らなくていいんですよ……さあ、一緒に街に帰りましょう……」
まずは、泣きながら微笑みを向けてくるタマちゃんを何とかしないといけないからね。