「さあ…………、答えろ。何でお前がスルトの技を使える?」
廃墟と化した要塞……、劫拳によって吹き飛ばされた敵に俺は問い掛ける。
炎閃、地嶽炎刃、紅蓮陣………、そして俺が使った劫拳や四神炎舞は元々はスルトの技だ。
俺が使える理由は単純に1000年前、そのスルトに技を叩き込まれ、継承しているからだ。
この時代に他に使い手が存在するわけがない。
加えて、スルトはある理由から神界を追放、零落させられた為に神々を嫌い、使う技の全てを神力ではなく魔力に変えて使っている。
百歩譲って技を使えるだけならともかく、その癖まで知って再現している事はどう考えてもあり得ない。
だが1つだけ、それが出来ても不思議ではない者が存在する。
俺は城を出る前、フリードに言いかけた事を思い返しながら、それを口にする。
明確な怒りと殺意を込めて。
「質問を変えてやる。
「―――――――――――――」
俺の怒りに呼応して発せられた魔力の圧がビリビリと俺達のいる空間を覆う。
それでも鎧の魔族は相変わらず言葉を発しない。
だが、答えの代わりに鎧の魔族から広範囲の地嶽炎刃と炎閃が放たれる。
「…………肯定と受け取ったぜ」
体内のアダムの書を起動、プリトヴィーの力で壁を作りその攻撃を全て受け止めつつ、バフォロスが弾き飛ばされた方へ手を翳す。
「来い………!」
『ガァアアアアアアッ!!!』
俺がそう呼ぶと同時にバフォロスはモヤを纏いながら咆哮を上げ、その場で弾かれた様に跳ね上がり、こちらに向かってくる。
咆哮は音を変え、徐々に
なるほど、どうやらアイツもやる気らしい。
全面に展開した岩の壁が砕けるのと、バフォロスが渇いた音を立てて翳した掌に収まるのは同時だった。
狼の姿をしたモヤは薄れ、代わりに空気を震わせる程の真空を纏う。
炎閃、地嶽炎刃が俺を襲うが、それでも俺の方が早い。
身体の前で荒ぶる刀身を構え、それを真の銘で呼びかける。
「封印解除…………、起きろ、
その瞬間、バフォロスの刀身が………、竜の爪と鱗が弾ける様に剥がれ落ち、中から虫の甲殻と翅を合わせたような真の刀身が姿を現す。
不気味な形の剣はその刀身を震わせ、迫りくる攻撃の全てを無数の振動の牙で喰らい尽くした。
「―――――――――ッ!?」
「餌はアイツだ。遠慮なく喰い潰せ」
切っ先を突き付け、語り掛ける。
振動の牙は不快な音を鳴らし、敵対する鎧の魔族目掛け、その暴威を向けた。
劫拳によってヘルムが歪み、ヒビ割れた鎧の魔族はその赤い眼光を揺らめかせながら立ち上がり、即座にその場から飛び退き退避した。
奴が飛び退いた場所、足場とその周りにあった瓦礫の山はベルゼブブの一撃によって細かく噛み砕かれ、塵と化して霧散していく。
「――ァァァァァァァアアアッッ!!」
その破壊力を目の当たりにし、これまで沈黙を守ってきた鎧の魔族が初めて威嚇の唸り声を上げる。
天聖具………、七聖者の力と対を成す七罪の大魔族の力の欠片、魔装具の真の姿を目の当たりにして………