ラヴァ・スライムを倒した翌日。
俺達は王都へ帰還することになったのだが……。
これから帰ろうと支度してるというのに、目の前では中々面白い光景が広がっていた。
「行ってらっしゃいませ、お嬢!!!」
「…………アルシアさん達の前では止めるように、って……私言いましたよね?」
どうにも俺達がラヴァ・スライムと戦っている間に何かあったらしい。
荒くれ者のドワーフ達――と、遊びと勘違いして混ざってる子ども達――がみんな纏めてアリスの舎弟と化していた。
だが、そんな彼らをアリスは空気が凍りつくような笑顔で見ていたが。
「………何があったんだ、アレ?」
「ああ。アリスの嬢ちゃんが尻尾巻いて逃げ帰ってきたアイツ等に喝入れたんだよ。オメェにも見せたかったな……相当面白かったぞ。」
「これより面白いのかよ……、惜しいことしたな。」
余程面白かったのか、ゴドーは1人、思い出し笑いをしている。
見れなかったのが本当に残念で仕方ない。
「大分堪えたのか、キビキビ動く様になってな。こりゃあドワーフの歴史を変えた少女として、ここで名を残すぜ?」
「アリスは絶対文句言うだろうけどな……。」
そう返しながら、俺とゴドーは顔を見合わせて、くつくつと笑った。
そして、俺は気になった事を聞く。
「けど、いいのか?」
「あん?何が。」
「アリスの着けてる篭手だよ。たしかに欲しいとは言ったけど……。」
アリスが着けているのは七元徳の一つ「正義の
たしかに頼んだのは俺だが、まさか
なので、どうするべきか考えていたのだが、ゴドーは豪快に笑ってから首を振った。
「いいんだよ、らしくねえ。言ったろ?スルト様の情報面で役に立てねえ代わりに俺らにできる事ならなんだって、ってな。それに、あのお嬢ちゃんには村を救ってもらっただけでなく、ドワーフの悪い癖を治してもらった。俺らじゃ使えねえ……、倉庫でホコリ被ってただけのもんじゃ支払う代金としては安いくらいだ。遠慮なく持っていけ。」
「……わりぃな。ゴドー。」
「いいってことよ。……なあ、アルシア。」
ゴドーはそこで区切って、えらく真面目な顔つきになった。
「…………相手は、
この騒動を起こしている黒幕の事だろう。
ゴドーは戦いには参加してなかったが、ラヴァ・スライムが放っていた気配を感じていたらしい。
顔つきが少しだけ険しくなっている。
「……今はまだ何とも。」
「倒せるのか?」
俺はそれに対して、首を横に振った。
「おいおい……。」
「正確には、まだ分からないが正しい。たぶんだが、敵の形が見えた。強さは分からない。ただ、もし敵が予想通りだった場合、俺達が束になってかかっても………勝てるかは分からないだろうな。」
ゴドーが青褪めるが、俺はそれに構わず淡々と話す。
残念ながらそれが事実で、本当に敵がそれであるならば、俺達がどう足掻いても勝てないかもしれない。だが……
「まあ、それが相手でも、やるだけやってみるさ。倒せる可能性は別に0じゃない。」
そう言って俺はまた視線を戻す。そこには腰に手を当て、まとめて正座させられているドワーフに元気に説教をしている少女の姿があった。
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第二部・完