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第44話「準備完了」


「アリスが来るなら問題ないか………。フェンリル、ニーザ、そっちはどうだ!!」


俺はラヴァ・スライムの相手をしながら、眼下の2人に声を掛ける。2人とも問題ないと頷いてくれた。


「アリスが来るタイミングには合わせられる。ニーザも力を貸してくれるからの。」

「私はフェンリルとアリスの手伝いだけだから問題ないわ。問題はトドメをどうするかだけど。」


アリスから念話が来る少し前、実はちょっとした問題が起きた。

急にラヴァ・スライムの力が膨れ上がったのだ。

初めから仕込んでいたのか、それともマグジールの端末体に何か仕込まれていたのか、それは定かではないが、いずれにせよ更に強くなった事には変わりない。

結局、予定が狂いトドメを担当するはずのニーザがフェンリルのサポートに回っている。

トドメを刺すのは出来なくはない。だが、それをやるとなるとこっちはこっちで力を練るのに時間がかかる。

少し手間だが、スライムの相手をしながらそれをやるか考えていた時だった。


『トドメは私に任せてもらっていいですか?何とかなり……いえ、してみせます。』


移動中のアリスから声が掛かった。


『アリス、いけるのか?』

『はい!』


フェンリルがそれを出来るのかと問いかけ、アリスはそれに躊躇いなく即答した。

彼女の性格から考えて、出来ないことを出来るという事はしないだろう。

俺はフェンリルの方を見て確信した。アリスなら大丈夫かと。

何せ、短い付き合いとはいえ、アリスと殆ど一緒にいるフェンリルがそれならば問題ない、と笑っているのだから。


『ならばよい。アルシアよ。そいつをまだ抑え込んでおれ。』

「言われるまでもねえよ。」


そう言って俺は、目の前のラヴァ・スライムと殆ど同じ大きさのゴーレムを動かす。

アダムの書に記録されている地母神プリトヴィーの力で生み出した物だ。

大地に干渉して操作する術だが、オリジナルには当たり前だが遠く及ばないし、何より、この規模のゴーレムを作り出すのにも動かすにも凄まじい勢いで魔力を食われる。

俺はバフォロスで魔力を奪いながらそれを神力に変換して迫りくるラヴァ・スライムをゴーレムで迎撃していく。


フェンリルの力で凍らせたスライムをコイツで倒せばいいのでは?となるが、超級、特級のスライム種はそうはいかない。

魔族にも人間でいうところの心臓があり、その位置も大体胸だったり頭部だったりするのだが、スライムの場合はそれがその身体全てが心臓にあたる。

そうなるとこれほど厄介な魔族もいない。万が一が起きない為にも、一撃で完全に破壊しきらなければならないのだ。

このラヴァ・スライムも先程から龍脈にも接続して強くなり、更に巨大化している。

俺の作れるゴーレムの規模では、足止めは出来ても、こいつを倒せるだけの火力は出せない。


「オオオオオオオオオオオオ!!」

「やらせねえよ。」


ラヴァ・スライムが咆哮を上げながらフェンリル達に迫るのを、ゴーレムで殴りつけて止める。

そろそろアリスが来るか……、そう思った時、アリスからの連絡が入った。


『フェンリルさん、ニーザちゃん、いけます!』

『分かった。合わせろよ、アリス、ニーザ!』

『誰に言ってるのよ?しっかりとブーストは掛けてあげる。あとは貴女達次第よ。』


3人が準備を始めたのが分かったので、俺はゴーレムの全身から拘束用の棘を生やし、ラヴァ・スライムの身体を串刺しにして動きを止めてから、その場から離脱する。


「くれてやるから、そいつと一緒にそこで大人しくしてろよ。」


俺がそう言ってその場から離れると同時に、入れ替わるようにカタパルトで射出されたアリスがラヴァ・スライムの真上に辿り着いた。

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