「ぐっ、………ぁ！？」

「気付いていないと思ったか？その鬱陶しい大剣を鎖と結び付けて投げつけ、出来た隙を狙って仕留めにくる戦い方など、見・て・き・た・者・か・ら・す・れ・ば・容・易・に・想・像・出・来・る・よ・。」

「なん、で……知って、る。」

腹から下、両断された下半身が自分の近く落ちる音を聞きながら、あり得ない事に驚いて聞き返す。

見てきたとは、どういう事だと。

しかし、答えるつもりは無いのか、奴はわざとらしく肩を落として、その仮面に覆われた顔を俺に向けた。

心底呆れた表情をしてるのが仮面越しでも分かる。

そのまま奴はこちらにゆっくりと歩いてきた。

トドメを刺すつもりだろう。

俺は立とうにも身体を半分失った以上、それをする事すら許されない。

「ガッカリだよ。災い起こしだのと呼ばれた君が、こんなにも呆気なく僕に殺されるなんて……。こんな奴に今・ま・で・僕・は・劣・等・感・を・抱・い・て・い・た・の・か・。」

「なんの…………」

「知る必要なんてないさ、ここで死ぬんだからな！」

黒マントは本当に俺が憎くて堪らないのか、俺の上半身から少し遠く離れた場所に落ちた下半身まで近付くと、修復すら不可能なレベルにまで細切れにした。

これでは、もう修復して身体に繋げる事も出来ない。

「アルシアッ！！」

こちらの危機に気付いたフレスが、珍しく感情を顕わに何とかコチラに駆けようとするも、強さは大したことはないが、数だけはいるスノーゴーレムに進路を阻まれ、近づけないでいる。

「………邪魔をするなぁっ！！！」

余程苛立っているのか、フレスは群れを為すゴーレム達を乱暴に砕くようにその刃を振っていく。

その剣筋には先程までの流麗さは無かった。

「……見えるかアルシア？あのフレスベルグのザマを？斬翼、斬将などと呼ばれ、魔族風情が人間の真似をして剣術など……道化と呼ぶ他あるまいよ。滑稽すぎて笑う事すら出来やしない。」

「てめ……ぐっ！？」

「黙れよ、アルシア。」

再び歩み寄ってきた黒マントに右肩を貫かれて、吐きかけた言葉を飲み込む。

「災い起こし、王国最強などと呼ばれたお前のせいで、僕らがどれだけ惨めな想いをしたと思っている？挙げ句の果てに、そんなお前は魔族などと仲良く身を寄せ合って、僕らに牙を剥くなど！」

「……ぁ…………っ、っ！？」

先程貫いた箇所を、乱暴に剣で斬り裂かれた。

肩から先の感覚が喪失し、代わりに凄まじい激痛が襲う。

悲鳴を上げようにも、最早そんな声すら出なかった。

「だが……今は僕が見下ろしている。あの時、僕をゴミを見るような目で見たお前をな！！………不様だな、アルシア・ラグド？」

心底愉快そうな声を出しながら、黒マントはその剣を今度は俺の心臓に向けた。

言動から、コイツの正体は分かった。

せめて、フレスに伝わるように、やつの口から言わせなければ………

「その口ぶり……っ、なら、………お前、は……………っ」

だが、ここまでしか口にできない。口から血が溢れて何も言えないのだ。

「………その通り。分かったならさっさと死ね！」

その言葉と同時に、俺の心臓は無慈悲にもマントの男に貫かれた。