「誰だ、お前は?」
そう問うが、謎の男は俺の言葉など聞こえてないかのように、周りの雪を吹き飛ばしながら一直線に突っ込んできた。
どうにも、狙いは俺らしい。
「フレス、スノーゴーレムどもは任せた。俺はコイツの相手をする。」
「任せろ。」
それだけ言って、フレスは俺達を取り囲む様に進んでくるスノーゴーレムの群れへと駆けていき、入れ替わるようにマントの男は俺目掛けて声を上げながら上段から二振りの剣を振り下ろした。
「ハアアァァッ!!」
俺はそれに対して斬り結ぶような真似はせず、バフォロスを地面に突き立ててそれを防いだ。
重たい音が響き、受け止めた俺を中心に雪煙が舞い飛ぶ。
「どうした?剣技で負けるのが怖いか?」
仮面の下からくぐもった声が響く。
ようやく、言葉を発したかと思えばそれか……と、少しばかり呆れながら返す。
「生憎、俺は魔導士なんでな。お前はともかく、あそこにいる達人を見てたら、恥ずかしくて剣技も一流なんて言えねえよ。」
目の前にいる男から、ちらりとフレスの方へ目をやる。
フレスはスノーゴーレムの拳を眉一つ動かすことなく、剣で難なく受け止め弾き返すと、一度鞘に収め居合の構えを取った。
弾き返されたスノーゴーレムを庇うかの様に、他のゴーレム達も迫るとフレスは高速で刃を振るい、刃を鞘に収めた。
「白翼剣陣。」
短い言葉と共に、無数の斬撃が押し寄せてきたスノーゴーレムをバラバラに斬り裂いていく。
フレスは倒れてくるその身体を足場にして、他のゴーレムの肩に飛び乗っては次々とその首を落とし駆けていった。
自分の握るそれはあくまで目の前の敵を、魔法を、障害物を薙ぎ払う為の鉄板の様な物であり、喰らうものだ。あれと比べられる物ではない。
「ガァアアアアアッ!!!」
フェンリルの力を餌として変質した青いモヤは、自分の身体に刃を向けた敵めがけてその顎を開いて襲いかかる。
「ちぃっ!!」
黒マントは不利を悟って俺とバフォロスから距離を取るが、俺は鎖を呼び出してバフォロスの柄に巻き付け、後退するところ目掛けて投げつけた。
奴は飛んでくるソレを撃ち落としはせず、柄に手を伸ばそうとするが、意志持つ剣がそれを許すわけもなく、再びその顎を向けた。
強奪は無理と悟ったのだろう。
黒マントはその手を引っ込め、剣の腹を蹴り飛ばすが、俺はその隙をついて右手に炎を纏わせ、やつの心臓を抉ろうとした。だが………
「そんな手は通じんぞ。
「なっ!?」
奴は俺の狙いを知っているとばかりにこちらに視線を向けてロングソードを横薙ぎに振り切り……
俺はその身体を両断された。