昨日の話し合いから翌日………、
ニーザ達と合流した屋上庭園で俺とフレスは出掛ける準備をしていた。
防寒装備のマント、携帯食料などを次々と収納魔法に仕舞っていく。
「行き先はスノーヴェール雪山じゃったな?」
「ああ。行き帰りで3日はかかる。アリスの事は任せたぞ。」
「汝に言われるまでもない。妾がしっかりと修行をつけてやるでの。」
「ちょっと、フェンリル。アタシもいるんだから忘れるんじゃないわよ。ね、アリス?」
「はい!フェンリルさんとニーザちゃんもいるので、アルシアさんとフレスさんも気を付けて行ってきてください!」
昨夜の内にこちらも大分打ち解けたらしい。
ニーザに関しては歳の近い友達感覚で接しているようだ。
「だそうだ。俺も準備出来たし、そっちは?」
「問題ない。」
そう言って、本来の純白の大鷲の姿に戻ったフレスは俺の隣で姿勢を低くした。乗れという事だろう。
俺はフレスに礼を言ってから、その背に乗る。
「じゃあ行ってくる。フリード、何かあったらフェンリルかニーザに伝えてくれ。俺かフレスに念話で伝えてくれるから。」
「分かった!アルシアもフレスも気を付けて行ってきてくれ!!」
見送ってくれている皆に軽く手で合図をして、俺達は王都を後にした。
◆◆◆
ファルゼア城を発ってから早半日、辺りが暗闇に包まれ始めたので俺達は途中、村を見つけたのでそこで宿を取ることにした。
初めは野宿も考えたが、しっかりした食事と睡眠を取れるならそれに越した事はない。
人の姿に戻ったフレスと共に一部屋借りて、ベッドの上に大の字で寝転がる。
「すまない。金を払わせるつもりは無かったんだがな……。」
「別にいいよ、知らない仲じゃないし。何より、1000年も魔族退治をニーザと2人でやってくれてたんだからな。これくらいじゃ安いもんだ。」
「……そうだな。君があんな真似をしなければ、ニーザと私……2人でなんて真似をしなくて済んだのだ。」
初めは申し訳無さそうにしていたフレスだが、俺が冗談を交えて気にするなと言うと、フレスもいつもの調子に戻って冗談で返すので「うっせ。」とだけ返す。
「念話で確認取ったが、そろそろだよな?」
「ああ。向こうもこの時間には間に合わせると言っていたし………、と噂をすれば何とやらだ。」
『準備は出来た。そっちはもうよいのか?』
フェンリルの声が念話で届いたので「いいぞ。」と返して起き上がり、通信魔法を発動する。
映像にはフェンリルとニーザの2人が映っていた。
『そっちは……宿か?』
「ああ。移動距離的にも丁度いい位置にあってな。これなら明日の昼前には着く。アリスの方は?」
始めたばかりだし、すぐにどうにかなる物ではない。聞くような内容ではないかと一瞬思ったが、フェンリルは緩く笑う。
『あの子なら問題ない。時間がかかるかと思ったが、コツを教えたらすぐに魔力と神力を分けて使える様になった。人間とは中々物覚えがよいの?』
「もう出来たのか?速いな……。」
『言っても、実践で使うにはまだまだ。本人がやる気だから、明日はその辺の復習もしつつ、朝からアタシとフェンリルで交代交代でアリスと模擬戦やって、神術と魔法の感覚を慣らしていくわ。』
俺が驚いていると、ニーザは明日の予定を軽く教えてくれた。
俺達が帰ってきてもまだ分けるのに苦戦してるだろうと思ったが、それを良い意味で裏切ってくれたらしい。
イヴの聖杖を渡したのは、やはり間違いではなかったようだ。
そう感慨にふけっていると、フェンリルが口を開いた。
『アリスも今は疲れて眠っておるし、本題に入らせてもらおうかの。』
フェンリルがそう言うと、俺の横にいるフレスと、映像のニーザの顔が少しばかり険しくなった。
『分かってるわ。
ニーザは表情をそのままに、そう答えた。