「………アルシア、何か分かったのかい?」
「ああ。それを答える前に………。先生、アリスが今みたいになったのはいつ頃から?」
そう聞くと、ディートリヒは顎に手をやりながら記憶を辿った。
「そうですね……。少なくとも、中等部までは普通だったのですが、去年の今頃から魔法のコントロールに難が出たようで…………。それ以前は本当に誰も真似できないくらいの魔法制御を持っていたのですが…それが何か?」
「魔法制御はそんな簡単に変化したりしない。急激に環境が変わったり、いきなり戦い方変えたりとかすれば、その場合は話は別だが、それでもそこまでは変わらない。アリスだって、そういう風な事をした訳ではないんだろう?」
その問いにディートリヒは頷いた。
「はい。あの戦い方も変化が起きてからなので、それまでは。」
「だろうな。おっかないだけで基礎は寧ろ完璧なんだ。改めて2人の戦いを見てくれ。」
再び舞台へと3人揃って目をやる。
ニーザの尻尾とメイス、翼の連撃をアリスはフォトンの刃を纏わせた杖と、フォトンをそのまま纏った拳、足にもフォトンの刃を纏わせてそれらを弾き飛ばすか反撃するかと、予想以上に善戦していた。
ニーザもニーザで、1割増し程度で少しだけ本気で戦っている。
「見て分かると思うが、抜群に上手いぞ。戦闘中にあれだけ魔法を展開、維持しながら戦うなんて、下手だったら絶対に出来ない。たぶんだが、その魔法コントロールに難ありって、杖を毎回壊してるから一部が言ってるだけだろ?」
「はい。今まではそんな事が無かったのですが、急にどんな素材で作った杖を使っても手当たり次第壊してしまうようになってしまった事から言われまして……、」
「それは
そう答えると、フリード達はどういう意味だと言わんばかりに驚いた顔をしていた。
「………変質?」
「普通は無い。と言うか、100人に一人いれば良い方だ。そもそも、よく考えてみろ。ニーザ相手に、アリスはもう10分以上戦っている。手加減してるとはいえ、高位魔族でもあるニーザ相手に普通の人間があそこまで粘るのはまず無理だ。最初はアリスが意外な戦い方するもんだからニーザが劣勢だったが、ちょっと本気出したニーザと戦って殆ど互角の戦いしてるのが下手くそじゃない証拠だ。」
「では、彼女の力はどういう形で変質を……」
「ああ、それは…………!?」
言いかけて舞台と、
フェンリルもフレスも気付いたようだ。
俺はニーザの前方に鎖で結界を展開し、凄まじい勢いで舞台へと移動したフレスが
「そこまでじゃ。アリス、よくやったの。」
「あ、フェンリルさん、フレスベルグ様?もしかして私………何かまずい事を?!」
「いや、君の力が予想以上の物だっただけだ。気にする事はない。そうだな?ニーザ、アルシア。」
「うん。アリスちゃん……ううん、アリスは悪くないわよ。そうでしょ?」
途中までボロ雑巾にされながらも、どこか楽しそうに笑いながら聞いてくるニーザに俺はゆっくりと頷く。
そう、何も悪い事などない。
アリスが予想以上に強かっただけなのだから。
「ああ。お疲れ様、2人共。取り敢えず、頑張ったアリスには俺から
俺はそう言いながら観客席から飛び降りてアリス達へと駆け寄った。
まさか……、ニコライから貰った使い道の無かった報酬がこんな所で役に立つとはな。