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第6話「アリスVSニーズヘッグ・2」


俺が観客席に移ってから数分後。

最初に動いたのは杖を2本持ったアリスだった。

アリスは構えた杖を頭上で交差するように構えて魔法を発動する態勢に入った。


「あの魔法陣、ホーリーテンペストか……。」


ホーリーテンペストは光魔法では最上級クラスに入る。光の粒子で生み出した暴風と爆雷を混ぜ合わせて射線上にある物を破壊する魔法だ。

コントロールが難しい魔法なので、てっきり杖2本で無理矢理制御してるのだろうかと、この時までは思っていた。

そう、思っていたのだ。


アリスは眩く発光する杖2本を重ねて横薙ぎに振り抜き、構築したホーリーテンペストをニーザ目掛けて放った。

魔法の発動を終えた杖2本は力に耐えきれなくなり、アリスの手元で砕けていく。


「………………何だ、ありゃ。」


放った魔法はたしかにホーリーテンペストだが、問題はその威力の方だ。

アリスの放った光の暴風は通常の倍の威力、倍の広範囲で展開され、闘技場の床を抉り、その瓦礫を更に砕きながら竜巻となってニーザに突っ込んでいった。


竜巻の向こうから「ちょっと、嘘でしょ!?」と本気で慌てたニーザの声が辛うじて聞こえるのと同時に、ホーリーテンペストはその場で留まって闘技場の床どころか、内包していた雷を周囲にばら撒きながら待機室や壁を凄まじい勢いで砕いていき、暫くして霧散していった。


「……………………………。」


初撃で放たれた魔法の威力を見て、観客席に重たい沈黙が訪れ……、「だから言ったじゃないか。」と言わんがばかりにフリードが引き攣った笑みで俺を見た。


隣を見るとフェンリルもフェンリルであまり見せない様な面白い顔で闘技場の惨状を見ているし、フレスも呆気に取られたような顔で煙が上がっているニーザのいるであろう場所を見ていた。

(さすがに死んでないよな……?)

と、心配して俺もフレスの見ている場所を見ると、煙を突き破りながら凄まじい勢いでニーザが出てきた。

涙目にはなってるが、竜でもあるニーザには幸い、そこまでダメージは入ってないようでちょっとだけホッとした。

しかし、安心している俺を嘲笑うかのように地上から光の刃が回転しながら2枚、ニーザへと襲いかかる。


「くっ!?」


ニーザは飛んできた1つ目をメイスで弾き飛ばし、2つ目を足で蹴り飛ばしてから、地上へと着地した。


俺はニーザが着地したのを確認してから弾き飛ばされた2つの飛来物を確認すると、それは先程持ち手の部分から折れてしまった杖の先の部分だった。

魔力の残滓を調べると、初級魔法のフォトンらしい。

ニーザの方を見ていたので詳しくは分からないが、恐らくアリスは初撃でホーリーテンペストを撃った後、折れてしまった杖でフォトンを刃状に展開して、ブーメランの要領で投げつけたのだろう。


「…………なるほど。フェンリルの言う通り、たしかに戦い方は乱暴だな……。」


俺は引き攣った笑みを浮かべたまま、呟いた。

1000年前のファルゼアでもあんな戦い方をする者は見た事が無いし、下手をすれば当時の下手な冒険者や騎士より強いのではないだろうか。

現に、アリスは今度は杖を一本取り出して、若干引き気味なニーザに走りながら中級魔法のフォトンウェーブを準備して突っ込んでいく。


「アンタ、本来は魔法使いとかそういうタイプでしょ!?そんな簡単に前に出るもんじゃないっての!」

「フォトンウェーブ!」

「いやあぁぁああ!?」


アリスはニーザの尤もらしい指摘を聞きながらも、振り下ろされたメイスを杖で受け止めて、そのまま零距離で用意していたフォトンウェーブを発動してニーザを吹っ飛ばした。


「は、ははは……」


うん、もう乾いた笑いしか出なかった。

正直、ニーザには申し訳ないが交代してラッキーだったかもしれない。

勝ち負けは別にして、アレは普通に怖い。

ディートリヒを見ると、今までここまで持ち堪える様な相手が居なかったのだろう。

こちらはこちらで完全にドン引きしていた。


「ちょ、ちょっと真面目にやらないとヤバいかも……行くわよ!」


ニーザも流石にまずいと感じたらしく、土魔法を発動して岩の弾丸を作り出すと、それらを一斉に撃ち出した。

手加減してるし、戦闘中は身体強化を掛けるのがセオリーだから、アレで怪我をする事はないだろう。


しかし、アリスは壊れた杖を捨てて再度新しい杖を2本取り出すと、最初の1本目で中級魔法のフォトン・ブラストを複数撃ち込んでそれらを破壊したあと、迎撃しきれなかった残りの弾丸を、もう1本の杖の先端にフォトン・ブレードを纏わせて、それらを斬り裂きながらニーザに斬り掛かった。

ニーザも流石に慣れてきたらしく、今度は普通にそれをメイスで受け止めた。だが………


アリスは身体強化を杖を持った左腕に集中させてニーザの筋力に対抗しつつ、収納魔法に仕舞っていた魔銃を取り出して、至近距離から連射していく。


「ちょっと待った!アンタ、バーサーカーか何かの間違いじゃないの?!」


ニーザは着弾しては爆発する魔弾から、翼を広げて自身の身体を守りつつ、少しだけ後退した。

だが、どうにもニーザの言葉がアリス的にはお気に召さなかったらしい。


「誰がバーサーカーですか!!」

「みぎゃああ!?」


怒ったアリスは魔銃を仕舞ったあと、設置型の地雷魔道具を点火してそのままニーザに投げつけて爆発させた。

呆然としつつも、漂うアリスの力の残滓からその正体に気付き、ぼそりと呟く。


「フェンリルの言う通りだったか………。」


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