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第3話「アルシアからの挑戦」


「ここはヴェルンドの村ですな……。」


俺の指差したポイントを見てディートリヒがぽつりと呟いた。


「やっぱりな。って事は、今も…………」

「ええ。ここには鍛冶や、それ以外の物作りを生業とするドワーフ達がいます。」


どうやら、あそこは今も昔も変わらないらしい。

無事、生き延びていてくれた事を知って、ほっとする。


「ここ最近、誰かが村を訪ねたりなどはしておるか?」

「はっ。先日、我が国で発注した武器を騎士団が受け取りに行っております!」


フェンリルに尋ねられ、光栄だとばかりに敬礼しながら兵士が答えた。


「………まあ、よい。つまり、ここの反応は……」

「ドワーフ達だな。やっぱり、反応が混ざってやがる。」

「そんなに強いんですか?」


アリスの問いに、俺は頷いてから答える。


「強い。一人一人が弱くても上級から超級魔族クラスの力の持ち主だ。あいつ等が5人集まって本気でこの国滅ぼしに来たら、たぶん半日もかからずに制圧出来る。」

「………冗談ですよね?」

「本当だ。特級魔族の群れとドワーフ5人どっち相手にしたいか聞かれたら迷わず特級魔族を選ぶ。」


横にいるフェンリルも同意する様に頷いたので全員が青褪めるが、問題ないと付け加える。


「彼らは温厚な種族だから、よっぽど無礼な事をしなければ大丈夫だよ。本当に物作りにしか興味の無い種族だから、彼らの村を破壊するなり、仕事道具を破壊するでもしなければ問題ない。」


彼らは言ってしまえば物作りにその人生の全てを捧げた種族だ。

だから他種族の争いには目もくれないし、素材と資金をしこたま用意して、無理難題を言っても喜んでそれを受けるのだ。

彼らを本気で怒らせた愚か者は、俺が知る限りヴォルフラムしかいない。

ある日、回収した素材を換金しにギルドを訪ねに来た時に、何となく城を見たら半分くらいが消し飛んでいたので、原因を知った時は死ぬんじゃないかと思うくらい笑い転げた物だ。


「さて、話を戻すが……、見ての通り似た様な魔力反応も引っ掛かる。これじゃあ探知魔法での判別は不可能だ。」


恐らくだが、偶然ではなく意図的だろう。でなければ、こんな探知の仕方は本来しないのだ。


「たしかにな……。これを虱潰しに潰して回るのは出来なくはないが、それにしては反応してる場所が遠いところが多い。これが罠であった場合、そこまで足を伸ばしてる間にこの国が狙われれば一巻の終わりじゃ。」

「ああ。これに関しては、あとでニーザ達にも確認するか。」


彼女達はたしかに強力な魔族を倒しているが、ここまで多いのであれば単純に処理しきれていないのだろう。

現状、あのクラスの魔族をまともに処理出来るのは、フェンリル達と俺だけだが、俺とフェンリルが2人増えた程度でどうこうなるものでもない。

よって……


「取り敢えず、この件は後回しだ。という訳で、やっておきたい事があるが……それはそれで、どうするか……。」


あの調整された魔族を調べようがない以上、他の案件を片付けたいが……俺個人でどうこうできるものではない。

協力してもらえるなら外で出来なくもないが、出来れば魔族などの邪魔が入らないところでやりたいのだ。

どうしようか、と考えを巡らせていると俺達を来賓室まで連れてきてくれた近衛師団長のノーデンが俺の目の前に来た。


「アルシア殿。もしかして、陛下に御用がお有りでしょうか?」

「ああ。実はちょっと貸してほしい場所があるんだ。」

「それでしたら、私にお申し付けください。陛下からはアルシア殿達が何かお困りであれば、代わりに応対する様、仰せつかっています。」


こうなる事も予め予想してたらしい。フリードと対応してくれるノーデンには感謝する他ない。


「そうか。ありがとう、ノーデンさん。なら早速なんだが、模擬戦を行える場所を貸してほしいんだ。それも、かなり広めの場所で。」

「それでしたら城の外に闘技場がございますし、ご要望には応えられますが………、何をなさるおつもりでしょう?」

「ああ、それはだな。…………アリス。」

「はい、何でしょう?」

「俺と戦ってくれ。」

「はい。………………へ?」


少し離れた位置で、きょとんとした顔で首を傾げる金髪の少女にそう答えると、彼女は返事をした後、ぱちりとした大きな目を点にして固まってしまった。

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