大規模侵攻から数年後………。
「てめえを殺しに来たんだよ、老いぼれ………!!」
「っ、かかれっ!!」
謁見の間にて男が悍ましいほどの殺意を乗せた言葉を放ち、その言葉を受けて全身を恐怖で竦ませながら、国王ヴォルフラム・ゴーランがその場にいる兵士達に指示を出す。
四方から来る攻撃を暗殺者、マグジール・ブレントは手にした剣で容易く払い除け、彼は一番近くにいた兵士の首を絞め上げ持ち上げたあと、その手に力を込めた。
「朽ちろ………っ!!」
持ち上げられた兵士は悲鳴を上げる間も無く、肉と頭髪、纏っていた物が全て腐り落ち、最後には髑髏だけが残り、息絶える。
恐怖心よりも、余りにも理解できない光景が目の前で起き、兵士達の動きが一瞬で止まった。
その隙を付いてマグジールは手にした髑髏を自身を取り囲む兵達に乱暴に投げ捨てた後、剣をだらりと下げ、床を割り砕きながら一直線に玉座まで翔んだ。
「ひっ………?!!」
ヴォルフラムは情けない悲鳴を上げながら玉座から逃げようとするも一足遅く、その腹に剣が突き立てられ玉座に磔にされる。
痛みはない。だが、先の兵士の様に貫かれた場所を中心に身体が塵と化していくのを見て、ヴォルフラムは恐怖した。
「し、死ぬ……?この、ワシが………っ、」
震えながらそんな情けない言葉が漏れる。
あり得ない。ファルゼアに於いて真の覇者となる為にあの忌まわしい男、戯神ロキを葬らせたのだ。
自身に刃を突き立て、愉快そうに顔を歪めているこの男に。
もう決まった事だった。
あの忌まわしい鴉も、それに群がる3匹の怪物もいなくなれば、このファルゼアを真に支配する事が自分には可能だと。
だが、それはもう叶わない。
逃れようのない絶対的な死が、貫かれた腹部を中心に広がっているからだ。
ヴォルフラムは残った力で目の前の男を強く睨むも、彼は愉快げに笑うだけだ。
「当たり前だろうが。死は誰にでもやってくるんだよ。てめえや
「なに………?き、貴様は……、一体…………っ、」
妙な物言いにヴォルフラムは違和感を覚え、問うも、目の前のマグジール、いや………、マグジールの姿をした誰かは不敵に笑い、まるで老若男女の声が混ざり合ったような不快な声でそれに答える。
「
「何、を……………、」
唯一言葉に出来たのはそれだけだった。
心臓などとうに朽ちている。
それでも生きているという奇妙な状態で話していたが、言の葉を紡ぐ口さえも腐り落ち、無事なのは顔半分だけ。
マグジールの姿をした誰かは続ける。
「何か面白いことが起きるかもしれないと、僅かな力と意識の欠片だけでも残しておくもんだ。たかだか人間の小僧が、
問いかける男の言葉に、返ってくる言葉は無い。
玉座に座るのはただの髑髏だった。
男は振り向いて、呆然とその光景を眺める事しか出来なかった者達目掛け、笑う。
「はっ、安心しろよ。てめえらに手は出さねえ。喜べよ!てめえらが排斥した者達によって運良く命を拾えた事を………、滅びから逃れられた事をな!!クククハハ…………、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」