「賢将と斬将………、それに妖姫………」
フリードの説明を聞いて、周囲がざわめく。
どうやら、本当に外部に情報を漏らさなかったのだろう。
何の確証もなく中途半端な情報を漏らせば、それこそ厄介な事になってしまうのだから。
ここからは俺達2人の役割だ。
彼らが聞いて首を傾げている内容を、今度は俺が説明していく。
「それは彼女達、高位魔族に与えられたもう一つの名だ。フェンリルもニーザ………、ニーズヘッグ達も、地界を統べる王、ロキに仕える幹部だ。そしてフリードの言った通り、彼女達は俺と一緒に同胞である魔族を殺して回った。
「人類を守る為に、同胞を……、何を馬鹿な事を!ならば、何故最初からその戯神とやらが殺された事によって動いた配下の魔族を止めない!」
ライの言葉にフリードとディートリヒを除き、皆が頷きはしないが同様の疑問を持っているらしい。
なるほど。当時の人間は常識として知っていたが、その辺の事も伝わっていないから、人魔戦争という偽りの話を信じる要因の一つにもなっているのか。
ただ、ライの言葉に素直に答えていいか悩み、フリードに視線を移すと、彼は無言で頷いた。その辺も利用していいという事なのだろう。
一度フェンリルにも視線を向けると、静かに頷いていた。
「まず、魔族はどういう物と認識している?どんな形でもいい。」
「人間に襲いかかるもの、それと、人類を滅ぼす為に動く存在、でしょうか……。でも……」
この問いにはアリスが答えた。ちらっと、隣に座るフェンリルを見て。
「正解であり、不正解だな。通常の魔族が人を襲うのは間違いないし、人類を滅ぼそうとしている。ただ、高位魔族は違う。それはアリスが知るフェンリルを見れば明らかだな?」
「はい。一緒にいた時間は1日に満たない時間ですが、私にはフェンリルさんが人を滅ぼそうとする人には見えません。それに、初めて会って、助けてもらった時に言ってたんです。高位魔族は無闇に人を殺さないと。」
その言葉に、城下町での一件の時に居た兵士が思い出したように呟く。どうやら彼らも呼んでいたらしい。
「たしかに、フェンリル殿は言っていました。無闇に人は殺さない。ここで死ぬのは挑んだ者のみと……」
「言ってた……、たしかに言ってた。それに、あの場所を凍らせた時も、町の人にも建物にも、何の被害も無かったぞ。」
「そう。彼女は、いや……彼女達高位魔族は自分や仲間に危害が及ばない限り、人間に危害を加えるような真似はしない。」
「ならば何故、他の魔族は人を襲う?」
ライが当然の疑問を口にする。良くはないが、ある意味良い質問だ。
「高位魔族より下の位……下級魔族から特急魔族までは人が挑み、乗り越えねばならないからだ。」
「挑み、乗り越える………?」
要領を得ないとばかりに大臣は首を傾げる。
俺はそれに答える前に、フリードとディートリヒを見た。
この辺はあの手記にも無かったし、ここからは複雑な話だからだ。
「俺達が普段倒している魔族。それは
俺の言葉を聞き、それを聞いた全員が騒然としだした。