学校の授業が終わったその日の夜。
私は寮の自室で明日の準備をしながら、今日の先生の授業を思い返していた。
「神界から神が降りてきた、魔族の誰かが破壊神を名乗っている、それ以外の何か、かぁ………。」
あの後、クラスの皆はどれが正しいのかと話し合っていた。
かくいう私も自分の所に来た友達2人とその話をしていたりする。
意外だったのが、その友達含めて2つ目の可能性、「魔族の誰かが破壊神を名乗っている」を押してる人が多かった事だ。
初めにそれを言った子が「あんなに笑ったくせに……」とむくれていたりしたけど、先生の反応が悪くなったのもあったから、そちらに考えを改めても仕方ないのだろう。
最終的に「どうだ!この俺の素晴らしい考察は!!」とか叫んでいたし、気にしてないはず。
「調子に乗るな!」と彼の友達には引っ叩かれていたけど……。
因みに私は3つ目の可能性、「別の何か、または誰か」だと思ってる。
先生が言っていた色々な力が計測された、という話からではなく、現在のファルゼアに存在する過去の歴史を考えて、だ。
正直な話、先生はああ仰っていたけど、本当はそういう理由でもその可能性を疑っていたんだと思う。
「結構、歪というか………、大分おかしいところがあるもんね……。」
ファルゼアの歴史に関わる資料は人魔戦争があったという1000年前から後は残っている物が多いが、それ以前の物は殆ど残っていない。
それ自体は失われた物と考えれば分かる。
問題はそのかろうじて残っている物と、後に残っている物とで内容の乖離している物が多いのだ。
そして、大昔に存在していたと言われている魔王、高位魔族、そして当時の騎士団や宰相などの記録に至っては何一つ残っていない。
当時の生活環境、魔法文明に関する記述、王室の活動記録などは割と普通に残っているらしいのにだ。
まるで、意図的にその部分だけ消されたかのように………。
一部の人は本当は人魔戦争なんて物は無かった、あれは当時の人が残したお伽噺だ、という人達もいるけど、いくら何でもそれは無いと思う。
私の故郷には当時の資料が極一部だけれど大切に保管されていて、その内容が人魔戦争が起きる前の資料と一致しているのだ。
実はそれこそが私が3つ目の可能性と思っている理由であったりする。
曰く、人魔戦争は人間の不手際で発生した物だと。
後に『語られる歴史』は恐らくは『
私達が今現在、人魔戦争と呼んでいる争いを防ぐであろう、真の功労者は別にいると……。
その人達の名前は今も覚えているし、人魔戦争の本来の正式な名前も私は知っている。
「大規模侵攻………。」
無意識にその単語を呟き、ハッとなってから私はそのまま時計に目をやる。
どうも長い時間、色々と考えを巡らせていたらしい。
普段ならば寝る時間をとっくに過ぎており、私は慌てて床に就いた。
翌日、とんでもない目に遭うことも、それを機に私の人生が大きく激変してしまう事も、この時の私はまだ知る事は出来なかった。