「そういえばオジサンはなんで瘴気で無事なの?
普通の人間は一瞬で魔族化しちゃう代物なのに、ああ、もう訳わかんない!」
登場時の落ち着いた雰囲気は何処に消えたのか、真黒な帽子のまま頭を抱えて座り込む。
「え、これってみんな影響ないんじゃないの?
クロバナさんも大丈夫そうだし……」
「私は良いの!
色付きの魔女は《周囲瘴気吸収》と《魔力変換》スキルを有してるんだから」
「なんか強そうだね」
瘴気を吸収できるとか、もしかしたら高レベルスキルなんじゃないのか。
しかもそれを魔力変換できるなんて、色付きの魔女っていうのは随分強そうだ。
「当たり前でしょ、万物に
とにかく下がって、魔剣の生存戦略が来る!」
クロバナさんの声には余裕がない。
つられて魔剣を見ると、瘴気がもうもうと立ち込め、その煙の中から
「あ、あれは?」
「ファブニルは過去の持ち主の魂を召喚できるの!」
「な、なんか狙いを定めて、構えてるんだけど?」
黒鎧は腰をしっかりと落として、幻影魔剣ファブニルを腰の脇に据える――。
「へえ、魔剣って色々できるんだねえ」
「なに呑気な事ばっかり言ってるの、早く隠れて!」
クロバナさん黒鎧の動きを止めるために、次々と魔法を放つ。
しかし黒鎧は動じることなく――一振り。
剣戟は縦に天井から地面を切り裂き、鉱山そのものを揺らす。
「やっぱり元魔剣使いの英雄は影でも半端ないじゃない!
けど――本調子じゃなくても黒の魔女を舐めないでよ!!」
クロバナさんがにやりと笑いながら両手を地面につく。
すると彼女のイメージが投影されたような漆黒の光の線が地面を走り、巨大な魔方陣が描かれる。
『シャドウ・ヘルハウンド・ヴァイト』×『シャドウ・ヘルハウンド・ヴァイト』
デュアルスペルで生まれたライオンのような二体の巨獣は、巨大な
行けるか――!
駄目だ、黒鎧から押し返すように瘴気が放たれている!
瘴気に呼び出されるように2体、3体、4体と、過去の魔剣の所有者たちが次々と
「クロバナさん、ダメだ下がって!」
彼女はどうやら本来の力を出し切れていないようだ。
黒い鎧を着た幻影たちが次々と増えていく。
過去に何体契約したか分からないけど、
一撃が即死級の敵なら、クロバナさんは撤退したほうがいい!
「逃げるなら一人で逃げて!
私は――魔剣を前にして、あの子の為にも絶対に逃げられないんだから!」
幻影たちは一斉に魔剣を構え、クロバナさんへと狙いを定める。
――大きな一撃が来る。
「制御できるか分からないけど――」
指をくわえながらクロバナさんは苦々しい顔をする。
首筋のネックレスに手をかけ、引きちぎろうと指をかける。
そんな決死な顔を、俺は見たくなかった。
「――待ってくれ、俺が、やる」
代償のある何かをしようとしている。
けどそれはやらせちゃいけない。
無職レベル1、スキルなしのオッサンに、クロバナさんはパーティーを組んでくれた。猫にご飯をあげたくらいの些細なことなのに。
裏ギルドの事も教えてくれたし、クエスト場所まで案内してくれた。
しかも死なないように帰れとまで言ってくれたんだ。
現実世界では、オッサンに対して、絶対にそんなことは起こりえない。
誰もがオッサンに無関心で、邪魔者扱いされて、余計なもの扱いで、人の意識の外にいる存在。
そんな俺を認識してくれた。
「礼は返させてもらう――!」
クロバナさんが魔剣ファブニルの相手をしてくれたから、必要なパークの目星はついた。
「無職のレベル1を
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🌸次回:第7話 世界を黄金色に染める↓
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