「貴様は召喚英雄パーティーには不要だな、無職レベル1の中年よ」
厳かな王の声が召喚の間に響いた。
昔は相当な武人だったのだろう、 顔に深いしわが刻まれ、左目には深い傷。
「しかも【召喚英雄スキル】すら持ち得ぬとは。なるほど、大人になってもなんと鍛錬が足らぬ表情と
周囲の視線が痛い。
一緒に召喚された高校生4人組は、華々しい【召喚英雄スキル】が表示され、早々に【召喚英雄専用武器】を手にしていた。
「これでは魔力を独占しようとする魔族たちへ、太刀打ちは出来んな」
王の言葉に、高校生たちはひそひそと話し、こっちをちらりと見ては笑っている。
俺も30代になって会社で肩身の狭い思いはしてきたが、異世界にまで来て「不要」と言われるとは。
召喚を執り行った魔法使い達も、俺のステータスを見て好き放題いう始末だ。
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■ステータス
□レベル :1(次のレベルまで∞)
□職業 :無職
□ステータス:体力1、力1、魔力1、器用1、素早さ1、運0
□保有スキル:なし
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『すべてステータス1なんて存在するのか――?』
『こいつ、どうやって生きてきたんだ?』
『ひい、無職の中年だ……!』
「――騎士団長、副騎士団長」
「はあい」「はっ」
豪華な鎧に身を包んだ2人が、一斉に敬礼する。
王は静かに息を吸い、重低音の声で言い放った。
「その者――ユウギ デンジを追放せよ!!」
★ ★ ★
――1時間後。
◆【ようこそ、王都セブンスへ】
※実績が解除されました。
城門を抜けた瞬間、俺の視界にメッセージが浮かび上がった。
「ん、実績が解除されたな?」
耳慣れた解除音に、不思議と心が和む。
俺はユウギ デンジ、召喚前はブラック企業の会社員だ。
30代で異世界に召喚されたのに、今は城下町の路肩に座るただの無職である。
「本当なら、家でゲーム三昧のはずだったのになぁ」
秋葉原のゲームショップで新作「ナイトブレードライダー4099Ⅱ」を買った帰り道、突然光に包まれ、ここに飛ばされてしまった。
「異世界でも長期的なキャリア形成の観点から、おっさんは不要ってことかね。
何も城下町に投げ捨てなくても」
ステータスは全て1、レベルアップに必要な経験値は【∞】(無限)。
どうやら一生レベル1らしい。
「けど高校生の中におっさんが混ざるのも忍びないし、低ステータスの俺を無駄死にさせないように追放してくれた――と解釈しよう!」
俺の良いところは切り替えが早く前向きなことだ。
そんなことを考えつつ、目の前に浮かぶ「ステータス画面」を見直していると……おかしなボタンを見つけた。
「これ、なんだ?」
画面の端に、小さくバグったようなボタンがある。
恐る恐る触れると、ステータス画面がくるりと回転し、俺が大好きな「ナイトブレードライダー4099」のメニュー画面そっくりの表示に変わった。
「……マジで?」
目の前に広がるのは見慣れた「装備」「ステータス」「実績解除」などのメニュー。
だが、所々に見覚えのない項目が増えている。
「『カンパニー』、『ハウジング』?
まさか 2作目仕様か!」
つい顔が綻ぶ。発売日当日に異世界転移したせいで未プレイだったけど、まさかこんな形で触れられるとは!
ここで俺は更に胸躍るタブを発見する。
「おっ、『実績解除』タブも健在だな!」
1作目で実績100%を達成した俺のゲーマー魂が騒ぎ出す。
画面を開いてみると、どれも異世界で解除可能な内容になっている。
「……よし、やってやろうじゃねえか」
追放された中年が――。
「異世界で実績全解除してやるよ!」
★ ★ ★
メニューを確認しつつ、まずは「パーク」をチェックする。
:ガラクタ分解1取得
俺の初期ポイントで『ガラクタ分解1』を取得し、近くに転がっている木材を視界に捉えると……。
「おお、アイテムボックスに入った!」
アイテムボックスには「素材:木材」として登録されていた。
次に、割れた剣を分解してみると、「ニューアイアンインゴット」として登録される。
「……これ、すげえ」
胸の奥がじわりと熱くなる。何かが動き出す予感がする。
「まずは町中の素材を集めて、資金を作るところから始めるか!」
俺は立ち上がり、ゲームのような自由な世界で、何をしようか考えながら歩き出した。
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🌸次回:第2話 英雄たちのルート↓
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