学院全体が祝福の光に包まれているかのように感じられ、私は夜空に広がるその神秘的な美しさと、試練を乗り越えた深い達成感に胸を満たされていた。
外へ出た私たち四人を迎えたのは、闇夜を切り裂くように広がるマナの光の奔流だった。その光は幾重にも折り重なり、学院全体を柔らかな輝きで包み込んでいる。静かな畏敬の念が自然と胸に広がり、それはまるで学院そのものが、私たちの努力を慈しむように祝福してくれているかのようだった。夜空を舞うマナは祝福の舞を踊るかのごとく揺れ、私たちを包むその光は、神秘と荘厳の象徴だった。
「七不思議を踏破した私たちを、祝福してくれているみたい…」
私は無意識にその光景を見上げ、そう呟いた。
頭上には、青や紫、黄金色の光が混じり合い、天上でゆっくりと流れるオーロラのように学院を覆っていた。その壮麗な光景は、ただ美しいだけでなく、学院の長い歴史とそこに刻まれた思い出を語りかけているようだった。見上げる生徒たちの間にはひそやかな感嘆の声が広がり、夜空一面を染め上げる光景に、誰もが心奪われていた。
その時、学院を包む光の舞を背にして、静かに佇む二つの影が目に入った。柔らかな七色の輝きが彼らを照らし、学院長はどこか懐かしげな微笑を浮かべて、夜空を見上げていた。傍らには、同じく天を仰ぐガレス先生が立っている。
「ふぉっふぉっふぉ…ついに七不思議を踏破したようじゃの。この七色のマナの舞踏を見るのも、実に久しぶりじゃ。なあ、ガレス君、感慨深いのぉ…」
学院長の声には深い思いが込められ、静寂の中で穏やかに響いた。その瞳には、遥か過去の面影が映り込んでいるかのようだった。
「かつて君も、先輩たちと共に七不思議に挑み、この光景を見て涙を浮かべていたのを、ワシは忘れておらんぞ。」
「学院長…それはもう二十年も前の話です」
ガレス先生は恥ずかしそうに目を伏せたが、その表情には懐かしさとともに、どこか温かな笑みが浮かんでいる。
「ですが…こうして見ると、あの夜が昨日のことのように思い出されますね。」
学院長は天を仰ぎ、低く静かな声で呟いた。「次にこの光景が見られるのは、いったいいつになるのか…」
「次は…いつでしょうね、学院長。」
ガレス先生の言葉には、切ない響きがわずかに滲んでいた。
「さあのぉ。この七不思議を導く『逆さ彗星』が学院の空を飾る日は、誰にも分からぬ。そもそも『逆さ彗星』は学院だけでなく、大陸全土に伝わる七大不思議の一つ。若ければ旅に出てその秘密を探りたいものじゃがな…ふぉっふぉっふぉ。」
学院長の声に、ほんのりとした遊び心が混じる。
「先日に講堂で若き日のご自身を魔法で投影されて、冒険者時代のお気持ちが蘇られたのでしょうか?」
ガレス先生は軽く笑いながら問いかけた。
学院長は微笑みを深めると、ふっと懐かしげな表情を浮かべた。「雷猫のフィンも、『逆さ彗星』の噂を聞いたら『ご主人、オイラ行く!』と騒いだじゃろうな。そして、このマナの光景を見て『ご馳走食べ放題じゃん!』と喜んだだろうと思うとな…。」
昔の相棒を懐かしむように、穏やかな口調で語る。
「ただ、ワシの冒険者時代はもう幕を閉じた。今は後進たちがこの光景に挑む姿を見る方が嬉しいのじゃ。新たな世代がこの試練を越え、この光景を目にする──それこそが学院の歴史であり、未来への希望そのものじゃろう。」
学院長の言葉には、長い時の流れを見届けてきた者だけが持つ静かな威厳と慈愛が宿っていた。
「まったく…学院長は、いつまでもお変わりありませんね。」
ガレス先生はため息をつきながらも、その言葉には長年の敬愛が込められている。
学院長は静かに笑みを返すと、再び夜空へと視線を戻した。その横顔は、時を越えて刻まれた記憶を見守る者のようだった。
光の舞はさらに輝きを増しながら学院を包み込み、二人の間には言葉では語り尽くせぬ深い思いが流れているようだった。七色の輝きは学院全体に降り注ぎ、長き歴史と無数の思い出を夜空に織り込むかのようだった。