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第6話 アリシア、LUK≪幸運≫にポイント極振りする

 わたしのステータス、LUK≪幸運≫を上げただけなのに、どうしてこうなった?


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アリシア=グリーン

種族:転生人族

Lv.10

HP:3720

MP:1860

STR≪筋力≫:220

VIT≪体力≫ :181

DEX≪器用≫:183

AGI≪敏捷≫:223

INT≪知力≫:301

LUK≪幸運≫:150

スキル:なし

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「ミィシェリア様……ステータスがおかしくなっちゃったんですけど」


「とくにおかしいところはありませんよ。アリシアはLUK≪幸運≫にポイントを振りましたからね」


 ミィシェリア様が即答する。

 えー? これでおかしくはないんだ?


「LUK≪幸運≫は運の良さに関係するステータスなのです。一般的にはアイテムドロップの量や質が上がるだけと考えられていますが、わずかながらステータス上昇ボーナスもつくのです」


「なんと! そんなことがあるんですね!」


 これで、わずかながら? 控えめに言っても爆上がりしちゃってませんか?


「LUK≪幸運≫は100刻みで大きな上昇ボーナスが入ります。STR≪筋力≫やINT≪知力≫を優先する人が多いので、あまり知られていませんが……」


 えー、LUK≪幸運≫ってやばい! 運が悪いと人生損するってホントなんだなあ。


「それと、今回のポイント消費には、女神ボーナスが入っています」


「女神ボーナス?」


 なんだろ、それ? もしかして、エッチでいかがわしいポイント? あ、パンツ見えるポイント?


「清く正しく美しい女神のポイントです。女神がそばにいる場合に一定確率で、女神の加護を受けられることがあるのです。女神の加護を受けた場合、あらゆる行動に対して上昇効果があります。今回で言えば、ステータスポイント消費時の上昇ボーナス、つまり女神ボーナスが追加されていますね」


「マジぃ⁉ 女神様最高! ポイント振る時はすぐにミィちゃんを呼ぶね」


 女神ボーナス、絶対お得だ!

 あーずっとミィシェリア様が一緒にいてくれたらなー。もうさ、一緒に暮らせばよくない? 


「誰がミィちゃんですか! 嫁にはなりませんし、友達でもないので、気軽に呼ばれると困るのですが……」


 いいじゃんいいじゃん。もうわたし、ここに住むし! 今日からズッ友だよー。


「LUK≪幸運≫上げてるだけで、他のステータスがガンガン上がっちゃう。これってやばくないですか⁉ チート?」


「Lv10でこの数値は異常値のように見えるかもしれませんが、正当な上がり方なのでチートとは言えないですね。ただし、一気にポイント消費してステータスアップというのは、転生者でしか起きえない上がり方ではありますが」


「ふーん。まあ、不正で没収されないならいいですけどー。ちなみに、このステータスどれくらいすごいですか? 冒険者だとどれくらい活躍できます?」


 一応聞いておこう。

 冒険者になるつもりはないけど、念のためね。


 ミィシェリア様は少し悩んだ後、口を開いた。


「そうですね……。ランダムボーナスのポイント分が大きく偏っていたと考えても、ざっとLv180相当くらいのステータスではないかと思います。ただし、冒険者で平均的にポイントを振り分ける方は少ないので、実用性という意味では、Lv100の冒険者と同じくらいの活躍はできる想定にはなるかと思います」


「うーん? なんか強そう……かも?」


「ピンときていませんか?」


「Lv100っていうと、つまりー、100歳のおじいちゃんおばあちゃんくらいですか?」


 そう考えると弱そう。あ、でも種族によってはもっと長生きする種族もいるかな。


「レベルは何も年齢という人生経験だけで上がるわけではなく、モンスターを倒した経験値によっても上がりますから……そうですね。Lv100ですと、王級騎士団に入れるくらいの実力だと思ってください」


「え、つまりそれってかなりすごいんじゃないですか⁉」


「そうですね。おそらく冒険者としてはAランクあたりに該当することになると思います」


「マジぃ⁉ わたし最強の10歳?」


 やった! これで力にものを言わせて、玉の輿に乗れるんじゃないの⁉ 王子様もお姫様も女神様も力こそパワー!


「ステータスだけ見ればなかなか良いと思いますが、冒険者はスキルをメインに戦いますから、スキルなしの現状では……できても適当に剣を振るうことくらいしかできないと思います」


 あー、そうなっちゃいますよね……。

 剣術を理解していない素人が力任せにぶん殴る、みたいな? 冒険者に囲まれたらやばそう。


「ええ、ですので、残念ながらそのままではステータスほどの活躍は見込めないかもしれません」


 ミィシェリア様が憐みの目でわたしを見てくる。

 いや、わたし、別に冒険者になるわけじゃないからいいんですけどね? でもちょっと悔しいな。ゴリラパンチじゃかっこ悪いな。ちょっとくらい剣術も覚えてみたいなーなんて欲が出てくるよね。


「あ、そうだ。ここで『ギフトスキル』とあとでくれるって言っていたチート能力の出番ですね! ね⁉」


 そう、スキルによってわたしの人生が決まるのだ!

 攻撃系のスキルが出たりしたら、まあ、そっちに進むのもありなのかもしれないし。


「『ギフトスキル』がまだでしたね。では、あなたの運命は自分自身の手でつかみとってください」


 ミィシェリア様が、どこからともなく小ぶりな壺を取り出した。

 白磁器の壺? 白くなめらかだけど陶器ではなさそう。ちょっと光ってるし。何だろう、この白い壺は。


「これはいったい?」


「この中に女神の祝福を受けたギフト玉が入っています。直感に従い、自分のためのギフトを1つ選び取りなさい」


「なるほど、ギフトガチャですね? わかりましたよ! レアスキル確定の天井は何回ですか⁉」


 アリシア人生最大の分岐点。できるだけレア度が高いスキルを! 虹色演出コイコイ! お金持ちになれるスキルをお願いしまーす!


「いえ……選べるのは1回だけですから」


「ケチッ! せめてログインボーナスに! 毎日通うから!」


「いえ……初回限定特典なので……」


「うぅ……ミィちゃんのけちんぼ―!」


「ケチとは何ですか! 0回にしてもいいんですよ⁉」


 うーん。しかたない。

 ならばこの1回に賭ける! ここからわたしのラッキーガール伝説が始まるのだ!


「えい、いざ、バラ色の玉の輿人生に向けてー!」


 ミィシェリア様が持つ壺の中に手を入れ、中をかき混ぜる。

 これかな、あれかな。


「……どうしました? 早くしなさい」


「しっ。集中してるからちょっと黙って」


 これでもない、あれでもない……しっくりくるスキルは……。


(さぁ、つかみ取れ。我が野望のために)


 ん? 今なんか言った?


「女神に向かってなんて口を!……まあいいわ。もうあなたには何を言っても無駄でしょう。好きなだけ選びなさいな……」


 キィキィ言ってるミィシェリア様の声が耳に響いてきただけかな?

 よし、集中だ!


「わたしの人生を変えるスキルはこれだー!」


 わたしはスキルを1つつかみ取り、壺から手を引き抜いた。


 どうだー⁉ 確定かっ⁉


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