10月1日
休日の土曜日――――――。
妹と祖母の三人暮らしである
「お
朝食をとろうと、二階の寝室から階下のリビングに降りてくると同時に、
「十時の約束なんでしょ!? あと、二時間もないよ! なんで、昨日の夜のうちに、掃除を済ませとかないの!?」
午前中からの来客に備えて、妹は、落ち着かないようすだ。
それというのも、今日は
なぜ、(自他ともに認める)女子と縁のない学園生活を送っていた
ことの経緯は、こうだ――――――。
放課後に行われた講義の内容は、下級生メンバーが日替わりで撮影してくれている。
ここで、いよいよ実践編に突入! となって、実施場所は、今回の企画の被験者でもある
講義の終了後、妹の柚寿にLANEの通話機能で、瓦木プロデューサーとドキュメンタリーの撮影係として、映文研のメンバー1名を我が家に招くことを申し出たところ、
「断固拒否する!」
という返答を受けてしまった。
柚寿の思春期女子という年頃と、学内の映文研の評判を考慮すれば、仕方のないことかも知れない。
(スイーツの提供などで、なんとか、交渉の
無い知恵を絞って思案していると、妹の方から、妥協案を提示してきた。
「亜矢ちゃんと、そのお友達なら、別にイイよ……」
LANEの無料通話のスピーカーを
「ゴメ〜ン! 土曜は、用事があるから、ちょっとムリだわ」
亜矢の友人のひとり、
「私で良ければ、一緒に行こうか? 撮影なら、少しは協力できると思うし……」
と、申し出てくれた。
「ありがとう! 莉子!」
「ありがとう! 樋ノ口さん!」
亜矢と寿太郎の声は、ほぼ同時に発せられ、少し驚いたようすの樋ノ口は、照れくさそうに微笑む。
「お邪魔でなければ……だけど……」
同じクラスになってから半年近くが経過しているにもかかわらず、これまであまり意識していなかったが、彼女は、その友人二名と違って、やや控えめな性格のようだ……と、寿太郎は感じた。
「いやいや……樋ノ口さんなら、大歓迎だよ! 大丈夫だよな、柚寿?」
彼女の申し出を喜んで受けることを確認すると、「わかった〜! オッケ〜」と、スマホのスピーカーから、妹の返事が返ってきた。
これで、なんとか、第1フェーズの《スキンケアおよび眉のお手入れ》実践編の実施にもメドが立ちそうだ、と安心していると、何故か、不機嫌そうな表情の亜矢が、
「ふ〜ん……『
と、不貞腐れたようにつぶやく。
どうして、そうなるんだ……?
誰も、瓦木を歓迎しないなんて、言っていないだろう――――――?
なぜか、ご機嫌ななめなプロデューサーをなだめようと、
「亜矢ちゃんが、お友達を連れて来てくれるなんて、めっちゃ嬉しいです!」
という柚寿の声が聞こえてきた。
「へぇ〜、
誰かさんというフレーズをわざわざ強調した亜矢の発言に違和感を抱きつつも、
「私もヨロシクね、柚寿さん」
穏やかな声で語る樋ノ口の言葉に続いて、妹は、スピーカーの向こうから、明るい声で
「こちらこそ、よろしくお願いします! 明日は、おふたりに会えるのを楽しみにしてます!」
と返してくる。そして、さらにとどめとして、
「それより、お
と、『兄の威厳』という概念など、まるでお構いなしといった感じで、叱咤の言葉(激励の意図はおそらくない)を浴びせてきた。
LANEの無料通話回線を通して行われる
瓦木亜矢は露骨に肩を震わせ、名塩奈美に至っては大口をあけて手を叩き、おまけに、樋ノ口莉子までクスクスと笑い声を漏らしている。そして、映文研の男連中は、あきれるように、乾いた笑みを浮かべるのみだ。
このように、女子二名が我が家に来訪するという