三軍男子の憂鬱〜
女子の目の前(しかも、彼女たちは、オレの所属する三年一組のみならず学年全体を見渡してもヒエラルキー・トップの不動の一軍メンバーだ)で、
「
「おぉ……スマン、
その恵まれた体型と身体能力を活かせば、彼らが通う高校の体育会系クラブの代名詞とも言えるアメフト部や、常時、部員募集中の柔道部でも活躍できるだろうに、こんなところで、自身に与えられた才能を無駄に使ってほしくないモノだ、と
「いつも、説明なしの強引な行動は控えてくれ、と言ってるだろ」
彼が、部長として、そして、友人として忠告すると、珍しく、ややバツが悪そうな表情を浮かべた
「スマン、スマン……
と、頭をかきながら苦笑し、今度は、声のボリュームを絞って、さらに言葉を続けた。
「寿太郎、お前自身を実験用モルモット……いや、
「ハァ……!?
「まぁ、落ち着いて聞け……お前は、先週末、瓦木亜矢の身に起こったことを知ってるか?」
その質問に、大きく首を振ると、
「瓦木は、『歌い手』として人気のハルカって奴と交際していたことを、
しかし、その歌い手の存在以上に、気になるのは、瓦木亜矢が、その相手と破局した、ということだ。
さらに、
週明けのこのタイミングで、学内ヒエラルキー上位の一軍女子サマが、わざわざ(心理的に)辺境の地と言っても良い、映文研の活動拠点に
そんな風に思考を巡らせていると、目の前の悪友は、彼の考えを悟ったのか、
「寿太郎、どうやら、俺と同じことを想像しているようだな」
と、たずねてくるので、肯定するように、だまって小さくうなずく。
こちらの反応に、ニヤリと表情を崩した
「さて、そこでだ……」
と、ややもったいぶった口調で間を置いて、自説を展開し始めた。
「瓦木が、お前を
(それは、イケメンもしくはスパダリと言いたいのか? わざとボケるにしても、もう少しマシなワードはなかったのか!?)
ツッコミを入れたくなる衝動をなんとか抑え、再び無言でうなずくと、友人の瞳は、まるで仄暗く光るロウソクの炎のように、怪しく揺らめいている。
興が乗るとは、こういうことを言うのだろうか?
どこか、楽しげな表情の
「その間に、こっちからは、瓦木たちの素顔に迫るべく、撮影を続けるんだ」
そうして、ヤツから発せられる
「カメラのチカラで、キラキラの一軍女子サマの
と、言葉を結んだ。
オレは、暑苦しいほどの
「つまり、瓦木たちの実態をドキュメンタリーの素材にしよう、ってことか?」
こちらの問いかけに、自身の意志が伝わったことを察したのか、
「そうだ! ボンクラ男子のイメチェン動画より、はるかに興味深い素材じゃねぇか?」
自分自身のことをボンクラと認めることに心は痛むが、なるほど、悪友の言うとおりではある。
「ヒエラルキー上位の女子の素顔に迫る――――――か、たしかに面白そうな題材だな。それに、これから他のクラブや生徒に取材を掛け合うよりは、はるかに時間短縮ができるしな……」
最後は、映文研の責任者らしく、取材交渉や撮影スケジュール、編集作業なども考慮に入れつつ、現実的な決定を下さざるを得なかった。
こちらの回答を耳にした
「オーケー! さすが、我らが映像文化研究会の部長サマだ」
そう語ったあと、
「それじゃあ、ゲストたちのところに戻ろうぜ!」
と、言い残して、ひとりでサッサと視聴覚室に戻って行った。
友人は、
「まったく、とんだ自称・天才軍師サマだ……」
彼は、独り言をつぶやきながら、