「……」
目を覚ますと、レイオス様が正座をしていた。
「レイオス様、夢の話、覚えていますよね?」
「はい……」
「さぁ、お答えを‼」
レイオス様はしばしもだもだしてから、私を抱きしめてキスをしました。
「やっぱり嫌だ! 君が他人のものになるなんて‼」
「だったら今夜初夜にします?」
「え、その心構えできるまでもうちょっと時間下さい……」
私は盛大にため息をついて。
「良いですよ」
と、答えた。
私もなんだかんだでレイオス様に甘いなぁ……
「──で、未だに白い夜を過ごしているのかい?」
「そうですよ」
二日後、侯爵様とスノウさんがやって色々話し合った。
勿論夢の事も。
「まさか、ティアの魂の欠片をレイオスの魂が内包していたとはな……」
「あの後もティアさんとお話しましたが、白い結婚の間は私は消えないからな! と毎夜の如くレイオス様を説教なされているそうです」
「どうりで炎も青くて、火の勢いもない訳だ」
そう言って通りすぎていくレイオス様を見ます。
げんなりしており、顔も青く、炎の勢いもなく調子がおかしい様子です。
「ティア、ごめんよ。アイリスが大事すぎてできないんだ」
とブツブツと上の空で謝罪しています。
ちょっとこれは重傷では無いかと思います。
「でもちょっとこれはやり過ぎじゃないか?」
「そうですわね……」
「はい」
お二人の意見に私も同意します。
「しかし、本当にティアか不安もあるな……よし、レイオス捕まえるか」
侯爵様はそう言ってレイオス様のところに行き、ぶん殴りました。
レイオス様はそれで倒れ、気絶した様子。
「レイオス様!」
「安心してください、アイリスさん」
慌てる私を宥めるスノウ様。
侯爵様はレイオス様を担ぎ、ソファーに寝かせました。
そして胸元に透明な半球体状の水晶のようなものを置いて、部屋を暗くして、ブツブツとつぶやきました。
すると、炎が水晶から燃え上がり、人の形をとりました。
ティアさんです。
『何かしらと思ったら、マリオンにスノウちゃんじゃないの』
「確定、ティアだ」
「ええ、ティア様ですね」
ええー⁈
確定するの早くないですか⁈
もうちょっとトラブルとか起きるものかと思ったんですけど。
いえ、トラブルがないのが一番なんですが!
……すでにトラブル起きていましたね。
レイオス様がこうなっているのも。
「ティア、お前レイオスに厳しくない?」
『だって、百年も語り続けてきたのに無視されたのよ!』
「まぁ、それは確かにレイオス様が悪いですが……」
『早く立ち直れって言っていた! で、百年経って漸く立ち直ってくれたと思ったら今度は白い結婚続行!』
「ああ、うん」
「それは……」
私の件ですね。
『大切にできないならいっそ呪い殺す!』
「ちょい待て!」
「お待ちください‼」
「それだけは止めてください‼」
『だって今ならレイオスから開放されて別の結婚相手を見つけられるのよ⁈』
ティア様、おそらく百年も放置された結果思考が固まってしまってらっしゃる。
「ティア様、私から最愛の御方を奪うつもりですか」
だからきっぱりと言いました。
『でもアイリスちゃんも聞いたでしょう、こいつの馬鹿発言!』
「聞きました、殴りました、夢の中で」
『だったら──』
「それでもいいのです、白い結婚がしばらく続いても。お陰で私は身長などが伸び続けています」
『……』
「つまり私はまだ成長期がある子どもなのです、体は」
『それは……』
ティア様は口ごもる。
「レイオス様はそれも分かっていて白い結婚を継続しているところもあるのです」
『でも、今のままだと貴方は……』
「死ぬ可能性があるってことですよね、知っていますよ。レラに腹蹴られた時死ぬかと思いましたから」
私は淡々と述べる。
「レイオス様は謝罪してくださいました、それで十分です」
『本当に、今のままでいいの?』
「まだ、未熟な体の私を気遣うレイオス様がいれば私はいいのです」
『……分かったわ、レイオスに何か言うのは止めるわ』
「有り難うございます、このままだとレイオス様が衰弱死しそうでしたので」
いや嘘じゃなく、本当!
あんなにげっそりしていたんだもの!
いつ衰弱死するか気が気でなかったわ!
『その代わり、貴方の夢には頻繁に出るわ』
「おい、ティア。お前はレイオスの魂の中に欠片が内包されてるんだろ、どうたってアイリスちゃんの夢にでているんだ?」
『それは二人が契約しているから、そして手を繋いで寝ているから、側で寝ているからよ』
「なるほど」
侯爵様は一人納得されたような顔をしてらっしゃいました。
「まぁ、いいけど、今度はアイリスちゃんをやつれさせたら俺ら容赦なく欠片も浄化するからな?」
『分かっているわ』
ティア様は笑ってから私を見ました。
『そういうことだからこれから宜しくね?』
「は、はぁ……」
そう言ってティア様は姿を消しました。
部屋の灯りが戻り増す。
少ししてレイオス様が目を覚ましました。
「レイオス、お前の中に居るティアと話したぞ」
侯爵様がはっきりとおっしゃいました。
「分かっている、先ほどそう言われた」
「まぁ、アイリスちゃんの体が未熟と判断しているなら、待つのも手だ」
「……」
「ただ、お前の独善で手を出さないって言うならボコるからな、俺等総出で!」
「脅すのは止めろ!」
レイオス様が本気でいやそうな顔をしてらっしゃいます。
それほど、嫌なのでしょうね。
「侯爵様、レイオス様は独善ではありません。私を思って手を出していないのです」
「なら良いんだけどさ……」
侯爵様、心配症ですね。
「本当、この方駄目だと思ったら私が
お茶を飲んでいたレイオス様が吹き出しました。
「なら安心だな」
「ど、どこがだ⁈」
「レイオス様、私が成熟しても手を出してこないと思ったら私の方から行かせて貰いますので」
「誰だ! アイリスに変な知識与えたのは⁈」
「ティア様ですが?」
「ティアー⁈」
そう言ってレイオス様は頭を抱えてしまいました。
「どうしてこうなった、どうしてこうなった」
「いや、お前の所為だろ」
ブツブツと再度呟かれるレイオス様に侯爵様が冷たく言います。
まぁ、確かにレイオスさまの所為ではありますが、余計な情報はティア様からなので。
文句はティア様に言ってください、寝た時にでも。
「さて、お茶会にでもしましょうか」
私は気を取り直して使い魔さん達にお茶会の用意をお願いしました。
使い魔さん達はせっせとお茶会の準備をし、私はお茶を入れます。
「さぁ、お茶にしましょう?」
そう言ってケーキやクッキー等を口にします。
レイオス様ももそもそと口にしていました。
「心臓に悪い……」
「さて、どうやって少しずつその気になって貰いましょうか」
レイオス様の発言を聞かなかったことにして、私は言います。
「だったらさーネグリジェを薄いやつに変えてもらったらどうだ! 下着見える奴!」
レイオス様は喉につまらせたらしく急いでお茶を飲みました。
そして侯爵様を睨み付けます。
「マリオン! そういう余計なことは言うな!」
「えーセクシーな奥さんみたくねーの? つまんねー」
「マリオン!」
「それも考えましょうか?」
私は意地悪なのでそれに乗ります。
「ほら見ろ、どうしてくれる!」
「別にいいんじゃね?」
「マーリーオーン‼」
「うわやべ!」
追いかけっこが始まりました、侯爵様とレイオス様の。
スノウさんは呆れた顔をしておりました、申し訳ない。