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第12話 海へ

 海へ


 元気にしていますか?

 迎えに行くと言っていたのに、ずっと会いに行けなくてごめんね。

 会えない内に、私たちはもう大人になってしまったね。

 鏡で自分の顔を見るたびに、海も同じように成長しているのかなと考えてる。


 でも、同じようになっていてほしくないなって思うこともあるの。

 私、がんになっちゃった。

 病院に行くのが遅かったのかな。

 転移もしているそうです。進行が早くて、治療は難しいみたい。

 そこだけは、同じじゃなかったらいいなって思うよ。


 海に会いたい。さいごに、海の顔が見たいな。

 もう会えないのかな、私たち。

 もっと早く、無理やりにでも会いに行っていれば良かった。


 会わせたい大切な人もできたんだ。翼くんっていう、小学生の男の子。

 昔お父さんが買ってくれた黒太郎にちょっと似てる。

 養子縁組をして親子になったの。私の息子。きっと、海とも仲良くなれる。

 私と海と翼くんの三人で、いろんなところに遊びに行くのが夢だった。


 ねぇ、海。話したいことがたくさんあるよ。

 謝りたいこともいっぱいある。

 私たちが離れ離れになってしまったこと。

 それから、お父さんが私たちを置いて出て行ってしまったこと。

 全部私のせいなんだ、

 私が、お母さんのことをお父さんに教えたから。

 何も言わなかったら、私たちは離れ離れになることはなかったかもしれない。

 ずっと後悔してる。本当にごめんなさい。

 私の正義は、正義ではなかったのかもしれない。


 海、会いたいよ。

 連絡してくれる?

 会いに来てくれる?


 海にまた、なぎちゃんって呼んでもらいたいな。


 海が会いたくなったら、会いに来て。


 ずっと待ってるから。


 渚より。


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