side千擁四郎
さて、あの灰風会との騒動から約10日後。
俺、雲上、中柱、それに元親四の部下全員で快晴探索者事務所に来ていた。
どうやら正式に所属を決める為の最後の手続きが有るらしいのだが……
「……灰風会構成員総勢512名を制圧、逮捕に貢献……。そして、下戸葛およびあの試合の観客や、灰風会に買収されていた刑務官等の関係者も44名とほとんどを捕獲……随分派手にやったね?」
「いやーあんたは相当やる方だとは思ってたが……」
俺は神谷さんと、何故か居る良秀に若干怒られていた。
「反省はしてます。後悔はしてません」
二度と神陀が何か出来ないよう、灰風会は叩き潰しておきたかった。
それに部下に手を出された気持ちも自分の中にあった。
……もう少し綺麗に後始末出来たらとは自分でも思うが、後悔は欠片もない。
「いやまあいいんだけどね、別に悪い事した訳じゃないし。私達にも中柱くんの一件でほとんど協力出来なかった負い目が有る。ただ、報告するのはやり出す前の方が良かったね、うん」
「はい」
「いやー、中々大変でしたよね。途中からは神谷さんにも情報面で協力してもらったり、元親四の方々も戦力として協力してもらったり」
「むしろ自分は200人くらいまでこの三人だけでどうにか出来たのが不思議っす……」
それなりに忙しい日々だったな。誇張なしに毎分人を追いかけてた。
「……せっかくだし色々と確認しておこうか。神陀、下戸、灰風など主犯の六名は逮捕、現在はスキル所持者用特別房に収監中。その他、灰風会の末端構成員も随時収監予定……。更に直接あの会場に来ていた観客達も事情聴取、逮捕に向けて進行中と」
「流石に配信を見ていた奴らまでは追いきれませんでした。けど、大体の奴らは後始末出来たかと」
「そうだね。また日本が少し平和になった訳だ」
神谷さんは目を閉じて何やら思いを馳せている。
「さて、千擁四郎くん。君は親切探索者事務所での因縁に一区切りつけた。そのお祝いに一つ渡しておきたいものが有る」
神谷さんは机から、小さな板を一枚取り出す。
そしてそれを俺の前に差し出してきた。
「これは……」
それは輝く新品の探索者免許証だった。
「千擁四郎。階級、一級探索者。所属、快晴探索者事務所」
そう書かれている。
「配信などで示した実力と、灰風会を潰した実績が正式に認められた訳だね」
「おお、六級から一級か。ここまで飛び級したのはあんまり居ねぇだろうな?」
「ようやく千擁主任にまともな評価が……自分感動っす……!」
「ザワザワ……」「やっとこんな日が……」「俺達も報われるな……」
「へぇ、あれだけやって一級程度なんですか……」
ほとんどが俺の昇級を喜んでくれる中、雲上だけは不満気な様子だった。
「私も特級が相応しいんじゃないかと訴えたんだがね……ダンジョン庁の彼らは頑固な所が有るから。しかし、君なら直ぐに特級にもなれるだろう。私はそう直感しているよ」
俺は探索者免許証を受け取る。
強さだけの俺には一級でも身に余る光栄だとは思うが……せっかくの期待には答えなければ。
「それじゃあ快晴探索者事務所の仲間として。これからよろしく頼むね? 一級探索者、千擁四郎くん」
「……ええ、謹んで、お受けいたします。神谷所長」
俺は新しい上司と光る探索者免許証に誓うのだった。
*
第一章 救済
~完~
千擁が相応の評価を得られだした所で、ひとまず物語には一区切り……。
千擁と雲上、二人が出会った過去や快晴での仕事を描く二章も随時執筆予定です。
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