VS
"元"一級探索者グループ
ブラックストーム
「死ねやぁ!!!」
「はっ!」
やたら派手な装飾の剣を構えた土志炭、彼が真っ先に襲い来る。
俺はその剣を力任せに弾き返した。
そして辻風で斬撃を飛ばそうとした所で……
『そう難しいもんじゃない。お前の
反撃禁止の命令を思い出し、手を止める。
「危ない……いつもの癖で反撃しかけた……」
神陀やコイツらと決着を着けるのもそうだが、何より中柱の無事が最優先だ。
命令を破るような真似は出来ない。
「ご、『豪炎』!!」
続いて二人目、魔法使い……名前は花氏だったような? 彼が飛ばしてきた巨大な炎も切り捨てる。
「くらえっ!」
三人目、丸坊主の男……名前は起古河だったか? 彼が飛び蹴りを放ったがら俺は半身になって躱した。
「おおっと! いきなりブラックストームの猛攻だ! 千擁もこれにはたまらず防戦一方か!?」
〈やっぱ一級三人は違うな〉
〈そこだ! 首狙え首!〉
〈なんか雲上に気に入られただけの運ゲー野郎に現実を分からせろー!」
〈過激なコメント多くね?〉
〈だってこの配信してるの闇サイトだからな。大手と違ってその辺の規約無いも同然だし〉
色々と好き勝手言われてるが……これでいい。
この状況での、俺のたった一つの勝算。
それは忍耐勝ちしかない。
つまり、俺はアイツらが体力切れで倒れるまで攻撃を防ぎ続ける。
そうすれば俺が反撃すること無く勝ちはもぎ取れる。
……我ながら酷い作戦だがこれしか思い浮かばなかったから仕方ない。
「どうした? そんなんじゃ俺は殺せないぞ」
「潰す!」「焼き尽くす!」「……お前ら! やってやれ!」
俺の挑発に、全員が乗った。よし、これで大技を連発して消耗してくれれば多少早く終えられるな。
「人をおちょくりおって……この前の様には行かないぞ!」
起古河が拳と蹴りを混じえた乱撃を繰り出す。
俺はそれ等を躱し、防ぎ、いなし……
とにかく消耗しないように耐え続ける。
「はぁ……チクショウ……これ最高級ガントレットだぞ……!? なんでそんな簡単に……!」
「さあ? 使い手が悪いんじゃないのか?」
〈避けた先殴れよ頭悪いな〉
〈千擁も口じゃなくて手動かせよ〉
〈案外避けるので精一杯なんじゃね?〉
「うるるるらぁ!!」
背後から雄叫びと共に風を切る音が。
この気配は……土志炭が仕掛けてきたか?
「拙いな、スキルを使うまでもない」
土志炭の不意打ちを横に飛んで避ける。
「危ねっ!?」
「ちょっ、気をつけろよ!」
……ん? 今何が起きた?
俺が避けた土志炭の剣が起古河に当たりかけてたような。
……! そうか、その手
俺は闘技場の中心に移動し、あえて三人に囲まれるような形を取った。
「……? 何を考えてやがる……?」
〈お、いいじゃん〉
〈挟み撃ちの形か……〉
〈流石に全方位から攻撃されたら防ぎきれないだろ殺せ!〉
「……」
俺は何も言わず、誰が動くのか警戒し続ける。
攻撃せずに相手を倒す方法はもう一つあった。
そう、乱戦では避けられない悲劇……同士討ちだ。
「くたばれっ!」
土志炭が再び切りかかってくる。
こいつでも同士討ちを狙えない事は無いだろうが、少しやりにくいな。
バチバチ……!
そう思いながら剣を防いでいると、気になる音がした。
俺は目だけで背後を見る。
すると、魔法使いの花氏が杖を掲げて、その先端に雷を迸らせていた。
よし! そういうのを待ってた!
「……『怒雷』!!」
ビシュン!
杖から雷の光線が放たれる直前、俺は花氏に向かって距離を詰めた。
「はっ!」
スキルを使わず、雷の光線を切り捨てる。
光線は俺を避けて二つに別れ……
「「ギャアアアアアアアアアアアア!?」」
見事背後の土志炭と起古河に光線は命中。二人は痙攣しながら地面に倒れる。
〈なにやってんだ馬鹿!〉
〈なんで攻撃してない千擁の方が有利なんだよ!〉
〈だから射線に入るなとあれほど……〉
「えっ!? そ、そんな……」
「ぐっ……この……」
良い防具を着込んでいたのか、震えながらも二人は立ち上がった。
まあ大打撃を与えられたのは事実だ。後もこの調子で……。
「……ったく、お遊びは終わりだ!」
頭上から罵声がした。何事かと思うと、灰風強が自動拳銃を構えている。
ドサッ!
しかし、灰風強は客の手前、決闘の形を崩したくなかったらしい。
自ら闘技場に降り立ち、俺を見据える。
「おおっと、こ、これは!? 我らが主催者、灰風強が飛び入り参加の様です!」
VS
二代目灰風会会長
灰風強
「わああああああ!」
〈四対一か〉
〈オマケに前衛二人後衛二人でバランスも良い〉
観客やコメントは予想外の事態に盛り上がっている。
まあ、俺としては一人増えた程度……
「なかなか面白い真似をやってくれるじゃねえか……お前ら良いか! こっからは俺の指示通り動け! それと……」
灰風強がブラックストームの三人に向かって命令する。
司令塔が加わったか……面倒だな。
「千擁……条件を追加させてもらおう、その刀は使用禁止だ。多少不自然になるだろうが、お前が強すぎるから仕方ない」
「……本気かよ」
敵は増え、ハンデも追加され……。
ますます不利だが……
「流石にちょっとキツイな……まあ、どんなにキツかろうが、こんな所で屈する訳にはいかないんだ。かかってこい、俺は負けるつもりは無い」
孤軍奮闘は慣れてる……問題は無い。
俺は自分にそう言い聞かせ、覚悟を固めた。