木の陰から、武装した男達が出てきた。汚い外見だが、鍛えられている。無精髭、長髪、傷、ハゲ、垢だらけの肌、太い指。野蛮な奴らだ。
「何だよ」
アッシュは溜息を吐く。次から次に。
「奴らは?」
「怒ってるみたいだ」とヴェロニカ。
「そういう事じゃない」
「六人いる」
「数えたのか」
「勘で言ったとでも思うか?」
「そういうつもりじゃない」
傭兵達が武器を構える。剣、斧、槌、槍、ナイフ。
「どれも痛そうだ」
アッシュが目頭を抑えた。
「眩暈がするよ、疲労が溜まってる」
「誰の使いだ?」
ヴェロニカが傭兵達に問う。
傭兵達は何も答えない。答える素振りすら見せない。
「もしかして友達だったか?」とアッシュ。
「友達じゃなかった」
それからヴェロニカは「先制攻撃だ」と言い、走り出した。
**
ヴェロニカは目の前にいた長髪の傭兵に突っ込む。長髪は剣を振りかぶるが、ヴェロニカが懐に入る方が速い。ヴェロニカは自分の肩を長髪の腹に押しあて、身体を浮き上がらせ、そのまま引っ繰り返す。地面で仰向けになった長髪の顔を踏みつけ、素早く剣を奪った。
「ヴェロニカ、危ない」
斧を持った無精髭とハゲの男二人が近付いていた。アッシュは走る。
「受け取れ」とヴェロニカ。
剣を放ってきた。
「こうなるって分かってたのに」
アッシュは速さを落とさずに剣を掴み、そのまま回転。
「ふざけんな」
斧を持った無精髭の首を刎ねた。頭が飛び、血が噴出する。
ヴェロニカはもう一人のハゲに拳を食らわせて、よろけたところで頭を掴むと、首を折った。
「なかなかやるじゃないか」
首の折れたハゲを地面に放ったヴェロニカが言う。
「昔、こっち系の仕事をしてたんでね」とアッシュ。
剣先から血が滴り落ちている。
「お前は雑魚かと思ってたよ」
ヴェロニカが死体を跨ぐ。
「俺は死刑執行人だぞ。弱い訳ないだろ」
アッシュが剣の血を払った。
「残りは三人だ」
ヴェロニカが肩を回す。
「俺は一人だけだ、もう後一人しかやらないぞ」
「十分だ」
対峙した傭兵達に突っ込む。
**
五人を殺して、最後の一人になった。太ったハゲだった。
「誰の差し金だ」
鼻が砕かれ、口の周りは血だらけだった。目からは戦意が消えている。
ヴェロニカは仰向けにさせた太ったハゲに跨り、胸倉を掴んで首を絞め上げる。
「ぐっ、苦し――っ!」と太ったハゲ。
当然だった。首を絞めている。
「直ぐは殺すなよ」
アッシュが言った。
「加減は分かってる」
手を緩めた。太ったハゲは咳き込む。
「誰の依頼でここに来た?」と改めてヴェロニカが太ったハゲの頬を叩く。
「ジゼルだ。奴の依頼だよ」
太ったハゲは鼻が砕けて呼吸がし辛いのか、ずっと口を半開きで息を吸っては吐き出している。
「そんなとこだよな」とアッシュ。
「俺達は奴の周りをしつこく嗅ぎ回った」
「そろそろ話すか」
ヴェロニカは立ち上がる。
「ジゼルの屋敷に行くぞ、アッシュ」