この神殿より先の南。丘の見える先に、多くの書物が集められた書庫があり、そこで悪魔召喚の儀式が試されているらしい。
一匹でもこの世界に
〝悪魔なんだよねー……〟
〝悪魔なんて、本当にいるんですか? 〟
〝居る。とはされてるけど、アーリアも見たことは無いよ。きっと居たら世界が終わるのかもね〟
〝怖いよー!! 〟
〝先生が言うとシャレにならないって!! 〟
「シャメナ民たちの書庫か。薄暗い噂が絶えぬ場ではあるが……?」
「未だ召喚の成功には至っていない。成功していれば、この世の理は崩れている。そしてどのみち、少年たちが目指す階段もそこにある」
「本当に……? なんでそこまで知ってるの?」
「我が根は広いのでな……来たぞ!!」
もの言う木さんが、突然声を荒げた。湿地の高い場所から、人の骸骨に無理矢理皮を貼り付けたような。醜悪な見た目のモンスターが襲い掛かって来た。
「迎え撃ていぃいッ!!」
〝さ。チュートリアル戦闘だよ。相手は亡者が3体〟
〝は、はい。あれ? ズルカルナインさんと、ダイアン&バクティって、表示されてますけど……? 〟
〝2人で1キャラクター扱いなんだよ。たまにガチャでもそういうキャラクターいるよ〟
〝ダイスを回して攻撃しか、今は選択できないみたいね〟
〝防御もできるけど、案内に従って倒しちゃって〟
〝は、はい!! 〟
「ふぅんッ!!!」
ナインさんの剣で一体が吹き飛ぶ。その隙に僕とバクティ。犬さんが連携してもう一体を攻撃した。
ナインの部下も連携して一体を仕留めた。その場に動く亡者は居なくなった。
「こやつらは?」
「シャメナの者たち。その末路だ。彼らは生命力を奪われ、このように使役されているのだ」
「なんてコト……!?」
バクティが青ざめて震えていた。僕は折り畳まれた翼ごと、震える彼女を抱き寄せるしかなかった。
「成敗せねばなるまい。
「結び目を断て。召喚の儀式場には、必ずそれが使われているはずだ。万象見定める我が名において、断言しよう」
「くくっ……余に、それを申すのか」
すっごい勢いで背中を叩かれた。笑ってる。獰猛に、でもできるって、ナインさんはどこまでも行くつもりの顔で、僕は、いやきっとその場の誰もが、目をそらせない顔だった。
◇◇◇
「枝を託す。これにより英傑を呼び寄せ、世界を守る力と成すが良い」
〝はい。というわけで、初ガチャ行ってみよー!! 〟
〝あ、ここでできるんですね。引き直しありって書いてありますね……? 〟
〝出たよ最初の最難関。いつまでも終わらない限定引き直しガチャwww〟
〝枠無しでズルカルナインさんあるから、ファイター1人いらいないって言ってもなぁwww〟
〝別名アリジゴクガチャ。配信でも抜け出せないヤツとか、たまに出るやーつwww〟
〝ええと、これどんな形で決めれば良いでしょうか? 〟
〝禀さんの……ああいや、聞かなくていいや。どうせだから、一馬くんに似てるキャラクターが出たらストップでどう? 〟
〝どんな男がタイプだ!? 〟
〝どんな男、なにィ!!? 〟
〝おっと……?〟
〝ほー彼が癖ですか、そうですか〟
〝おいおいおいおい穏やかじゃねえなwww〟
〝委員長……www〟
〝まあ、短い時間でみんな看破してた訳だが〟
〝なに、あんたら、本当にそう言う関係なの……?〟
〝沙耶たそ知らなかったんだ……w〟
〝ああもうっ、これで決定で良いですぅう!! 〟
禀はコメントの様子に恥ずかしくなって、急いでボタンをタップした。タペストリーが10枚ズラリと並び、その内2つが虹色に。1つが金色に輝いた。
〝おおっ、これはぁ……!!〟
〝お茶会だぁー!!!〟
〝マジで!?〟
〝道化騎士も居るぞ!? 〟
〝コンピューター様もか、また渋いチョイスをww〟
画面の前には、紳士服の男性とアリスルックの童女。ピエロのような華美な装飾鎧をまとう騎士。そして、マントを羽織った人のような。ロボットのような少女。
〝これもう、引き直さなくて良くね?〟
〝2枚抜き。それも1回でか〟
〝画面の向こうで血涙流してる連中が、見える見えるwww〟
〝先生息してる?〟
〝ダメみたいね。アーリアさん、白目剥いて固まってる〟
〝えっと、このまま進めてもよろしいのでしょうか? 〟
〝うん。タップするとみんな挨拶してくれるから。そのまま進めると良いよ〟
禀はわくわくしながら画面をタップした。すると最初に虹色に輝いた、紳士服の男性と童女のキャラクターが表示された。
「あら? あらあらあら? 初めまして探索者さん。私はアリス。こっちはドジソンおじ様よ」
「や、やあ。良かったら、あ、後で、お茶でもどうだい?」
〝最高クラスのマッパーだぜ。良かったな委員長〟
〝あ、はい。ありがとうございます〟
〝マッパーっていうか、ベンチバッファーだよな。実質〟
〝今日もアリスちゃんのおかげで、お茶が美味い〟
次に表示されたのは、ピエロのような騎士だった。彼も虹色のタペストリーだ。
「ハッハッハッハッ、どうやら大当たりのようですよ、ダゴニット推参でぇございますぅう!!!」
〝わぁ……ハデ〟
〝でたな。歯に何も着てねえ代表格〟
〝裸一貫の道化めwww〟
〝毒舌騎士w〟
〝毒っていうか、マジで痛快って言うか……〟
〝世界一愛された毒物めwww〟
一瞬表示画面にノイズが走る。禀は慌てて機材をチェックしようとしたが。マントを羽織った人のような、ロボットのような少女の姿が表示された。彼女は金刺繍
〝お使いの器機は正常です〟
〝コンピューター様! 私は平常です!! 〟
「あなたは幸福ですか? そうですか。では、オランディア。起動します」
〝こ、濃い……〟
〝まあ、ソシャゲキャラはそんなかんじだよ。委員長〟
〝手札は揃ったかな。十分な戦力だぜ〟
禀にはよく分からなかったが、相当良いキャラクターをガチャで向かい入れる事が出来たらしい。そして、ここで一度休憩を入れる事になった。アーリアが目を覚ましたのは、休憩を終える直前だった