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第74話 引き直しガチャと思わぬ成果

この神殿より先の南。丘の見える先に、多くの書物が集められた書庫があり、そこで悪魔召喚の儀式が試されているらしい。


 一匹でもこの世界に顕現けんげんすれば、たちまちこの世の取り決めを壊され、汚され、大惨事となってしまうと、物言う木さんは僕たちに語ってくれた。


〝悪魔なんだよねー……〟


〝悪魔なんて、本当にいるんですか? 〟


〝居る。とはされてるけど、アーリアも見たことは無いよ。きっと居たら世界が終わるのかもね〟


〝怖いよー!! 〟

〝先生が言うとシャレにならないって!! 〟


「シャメナ民たちの書庫か。薄暗い噂が絶えぬ場ではあるが……?」


「未だ召喚の成功には至っていない。成功していれば、この世の理は崩れている。そしてどのみち、少年たちが目指す階段もそこにある」


「本当に……? なんでそこまで知ってるの?」


「我が根は広いのでな……来たぞ!!」


 もの言う木さんが、突然声を荒げた。湿地の高い場所から、人の骸骨に無理矢理皮を貼り付けたような。醜悪な見た目のモンスターが襲い掛かって来た。


「迎え撃ていぃいッ!!」


〝さ。チュートリアル戦闘だよ。相手は亡者が3体〟

〝は、はい。あれ? ズルカルナインさんと、ダイアン&バクティって、表示されてますけど……? 〟


〝2人で1キャラクター扱いなんだよ。たまにガチャでもそういうキャラクターいるよ〟


〝ダイスを回して攻撃しか、今は選択できないみたいね〟


 〝防御もできるけど、案内に従って倒しちゃって〟 


 〝は、はい!! 〟


「ふぅんッ!!!」


 ナインさんの剣で一体が吹き飛ぶ。その隙に僕とバクティ。犬さんが連携してもう一体を攻撃した。


 ナインの部下も連携して一体を仕留めた。その場に動く亡者は居なくなった。


「こやつらは?」


「シャメナの者たち。その末路だ。彼らは生命力を奪われ、このように使役されているのだ」


「なんてコト……!?」


 バクティが青ざめて震えていた。僕は折り畳まれた翼ごと、震える彼女を抱き寄せるしかなかった。


「成敗せねばなるまい。如何いかにすれば、このような横暴を止められる?」


「結び目を断て。召喚の儀式場には、必ずそれが使われているはずだ。万象見定める我が名において、断言しよう」


「くくっ……余に、それを申すのか」


 すっごい勢いで背中を叩かれた。笑ってる。獰猛に、でもできるって、ナインさんはどこまでも行くつもりの顔で、僕は、いやきっとその場の誰もが、目をそらせない顔だった。 



◇◇◇



「枝を託す。これにより英傑を呼び寄せ、世界を守る力と成すが良い」


〝はい。というわけで、初ガチャ行ってみよー!! 〟


 〝あ、ここでできるんですね。引き直しありって書いてありますね……? 〟


〝出たよ最初の最難関。いつまでも終わらない限定引き直しガチャwww〟


〝枠無しでズルカルナインさんあるから、ファイター1人いらいないって言ってもなぁwww〟


〝別名アリジゴクガチャ。配信でも抜け出せないヤツとか、たまに出るやーつwww〟


〝ええと、これどんな形で決めれば良いでしょうか? 〟


〝禀さんの……ああいや、聞かなくていいや。どうせだから、一馬くんに似てるキャラクターが出たらストップでどう? 〟


〝どんな男がタイプだ!? 〟

〝どんな男、なにィ!!? 〟


〝おっと……?〟

〝ほー彼が癖ですか、そうですか〟


〝おいおいおいおい穏やかじゃねえなwww〟

〝委員長……www〟


〝まあ、短い時間でみんな看破してた訳だが〟


〝なに、あんたら、本当にそう言う関係なの……?〟


〝沙耶たそ知らなかったんだ……w〟

〝ああもうっ、これで決定で良いですぅう!! 〟


 禀はコメントの様子に恥ずかしくなって、急いでボタンをタップした。タペストリーが10枚ズラリと並び、その内2つが虹色に。1つが金色に輝いた。


〝おおっ、これはぁ……!!〟


〝お茶会だぁー!!!〟

〝マジで!?〟


〝道化騎士も居るぞ!? 〟

〝コンピューター様もか、また渋いチョイスをww〟


 画面の前には、紳士服の男性とアリスルックの童女。ピエロのような華美な装飾鎧をまとう騎士。そして、マントを羽織った人のような。ロボットのような少女。


〝これもう、引き直さなくて良くね?〟

〝2枚抜き。それも1回でか〟


〝画面の向こうで血涙流してる連中が、見える見えるwww〟


〝先生息してる?〟

〝ダメみたいね。アーリアさん、白目剥いて固まってる〟


〝えっと、このまま進めてもよろしいのでしょうか? 〟


〝うん。タップするとみんな挨拶してくれるから。そのまま進めると良いよ〟


 禀はわくわくしながら画面をタップした。すると最初に虹色に輝いた、紳士服の男性と童女のキャラクターが表示された。


「あら? あらあらあら? 初めまして探索者さん。私はアリス。こっちはドジソンおじ様よ」


「や、やあ。良かったら、あ、後で、お茶でもどうだい?」


〝最高クラスのマッパーだぜ。良かったな委員長〟

〝あ、はい。ありがとうございます〟


〝マッパーっていうか、ベンチバッファーだよな。実質〟

〝今日もアリスちゃんのおかげで、お茶が美味い〟


 次に表示されたのは、ピエロのような騎士だった。彼も虹色のタペストリーだ。


「ハッハッハッハッ、どうやら大当たりのようですよ、ダゴニット推参でぇございますぅう!!!」


〝わぁ……ハデ〟


〝でたな。歯に何も着てねえ代表格〟

〝裸一貫の道化めwww〟


〝毒舌騎士w〟

〝毒っていうか、マジで痛快って言うか……〟


〝世界一愛された毒物めwww〟


 一瞬表示画面にノイズが走る。禀は慌てて機材をチェックしようとしたが。マントを羽織った人のような、ロボットのような少女の姿が表示された。彼女は金刺繍のタペストリーだった。


〝お使いの器機は正常です〟

〝コンピューター様! 私は平常です!! 〟


「あなたは幸福ですか? そうですか。では、オランディア。起動します」


〝こ、濃い……〟

〝まあ、ソシャゲキャラはそんなかんじだよ。委員長〟


〝手札は揃ったかな。十分な戦力だぜ〟


 禀にはよく分からなかったが、相当良いキャラクターをガチャで向かい入れる事が出来たらしい。そして、ここで一度休憩を入れる事になった。アーリアが目を覚ましたのは、休憩を終える直前だった

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