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第71話 R&AのTDD初プレイ実況配信

 禀は視聴者コメントからの案内を受けて、タブレットを指先で操作し、TDDをダウンロードしようとしていた。


 中央の長細いイントールと書かれた画面をタップする。アイコンの中央でくるくるとダウンロードを示し、読み込みが完了した。


 今日、アーリアと禀は、TDD公式運営委員会から正式な依頼。いわゆる「案件」として、TDDのプレイ配信を行う準備を進めていた。


「えっと、これで良いのでしょうか?」


〝そうだよー。後は普通のアプリと同じ〟


〝起動するとオープニング始まるから。マジ良い歌だからオヌヌメ〟


〝マリ子さんの歌。良いよね……〟

〝中の人共々、バクティちゃんの歌ヤベーもんな〟


〝自前でハープやってんのは芸達者すぎる〟

〝イベントでも毎回ご披露してんだからなー〟


〝沙耶ちゃんと、エルフ先生マダー? 〟

〝急な雨は仕方ない。梅雨だもんげ〟


〝エルフ先生。しばらくダンジョン深く潜るんだっけ? 〟


「そうですね。この配信の後に少し先生は長めにお休みを頂いて、先日の犯人の手がかりを探るそうです。ダンジョン庁からの依頼でして……」


〝不気味なくらいこっちじゃ、証拠出なかったもんな……〟

〝今じゃ唯一の手がかりだもんなぁ〟


〝ここまで徹底してると、もうなんかのブラフってーか、カモフラージュ。スケプだったんじゃねえかと思うよな〟


〝水面下で何かしてるってか? くわばらくわばら……〟


「何事も無ければ往復2週間のご予定ですが、先生も行った事もない場所に踏み込むようです。しっかり準備と休息をとって挑むそうですよ。私たちも期末考査ありますので」


〝ぐああ、持病のテストしたくない病がw〟

〝テストかー……懐かしいな〟


〝点数どうだったの委員長?〟


「少しイマイチでしたね。もっと勉強もしないとです」


 自宅配信の延長上なので、アーリアと沙耶、ついでにゴブリンは急な雨で洗濯物を取り込んでいた。今日一馬たちは予定が空かず、メインはアーリアと禀の2人だけで行う事になっている。


 当初。アーリアだけの配信で、公式運営から依頼されたのだが。アーリアの提案で、プレイ経験の無いメンバーである禀をメインプレイヤーに据え置き、ゲストに沙耶を迎えて配信を行う事に、相談の上で変更していた。


「終わったわよー。お、そっちも終わった見たいね。この可愛いのが噂のバクティちゃん?」


「そうだよ。可愛いでしょ」


「本物のハルピュイアとは、似ても似つかないわねー……」


〝そりゃそうだwww〟

〝まあ、性格はゲフンゲフン。ネタバレNGだったな〟


 アーリアが指先でタップするアイコンには、肩上で切り揃えた黒髪、太い眉、アーリアのように長い耳の少女がこちらに微笑んでいた。


「じゃ、揃ったし始めて良いかな、禀さん?」


「OKです。……それじゃ、スタートです!」


〝いえーい待ってました!! 〟

〝久々に見るかー〟


〝わりと飛ばせないOPだよね〟


 画面が暗転し、運営会社のロゴマークが表示される。オープニングが始まり、噴水に腰掛けたハーピィの少女。バクティが、ハープを奏でている。


 閉ざされた

 廻廊の向こう側で

 銀色の光翳せば

 果てない時に誘われて

 君の影がまだそこに佇んでいる

 遠い未来も

 はるか、いにしえも

 とけて1つになる


 次々にアニメーションが移り代わる。多くの英傑、怪物、そして、人物が登場し活躍する。最後に真っ白い羽の羽筆を踊らせ、誰かがが本を綴り終えて、オープニングは終わった。


「おぉ……!!」

「良い歌だったでしょって、沙耶さん!!?」


「ふぐっ……ひぐっ……!」


〝早っ!! 泣くの早!! 〟

〝まあ、最初に見たなら仕方ねえ〟


〝当時衝撃すごかったもんな……〟

〝作画がどうってより、なぁ……〟


〝歌は文化の極みですな〟


「おお〜よしよし。ほら、チーンしなさいチーン」


「ま、まぁ……とりあえず、始めますね」


 禀がタブレットをタップする。ターミナル画面が表示され、アーリアの案内で、まずはチュートリアルへ、TDDのゲームプレイ配信が始まった。

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