太陽がオレンジ色に輝き、虹色の雲が赤一色に染まり始め……、壮絶な美しさに呼吸がうまくできなくなる。
空港の公園に着いた私は、そこの芝生に倒れ込んだ。
ペースなんて一切気にしていなかった。仰向けになって、せき込みそうになりながら空気を取り込む。
視界一面に広がる空。先輩が教えてくれた雲の名前。
……彩雲が黄雲になり、茜雲に変わっていた。
そろそろ、彼女に先輩を返してあげなければならない。
この世界の雪花。未だベッドから出られないでいるもう一人の私。
(会って、見たかったな……)
妬ましいと、嫌味を言われるだろうか。それとも虚勢を張って、平気なふりをするのだろうか。
でも。
大丈夫。
あなたは、一人じゃないから。
先輩が、一緒に戦ってくれるから。
ずっと、想っていてくれるから。
観客席で応援するのではなく。
ストップウォッチを持ってゴールで待っているのではなく。
いつかのように、隣で一緒に走ってくれるのだ。
――そして私も、一緒に。
元の世界で、頑張るから。
だから、ごめん。一言だけ、言わせて。
先輩。優しくて意地悪だった、先輩。
先輩が、彼女に会いたくて私を呼んでしまったというのなら。
私で、よかった。
この世界の私を呼んでくれて、嬉しかった。
苦しくて苦しくて、何度も恨みそうになったけど、それでも、あなたに会えてよかった。
――私も、先輩のことが、好きでした。
そうして私は、校門を出たときから続いていた鈍い頭痛に別れを告げた。
痛みと共に手放したものが胸に大きな穴を穿って、夕焼け空を仰いだまま、声が枯れるまで泣いた。