空が
真っ青な空を、真っ白な入道雲がもくもくと侵食していく。校舎の純白色の壁と相まって、照り返された日光が目に痛い。セミや鳥のさえずりは、まるで全力で暑さをわめいているようで、耳まで痛い。
対して、目の前の図書室の薄暗さと静けさといったらどうだ。あまりにも差がありすぎて、果たしてここは同じ場所なのかと思わず疑ってしまった。
「
図書室の中は、さらに異空間のようだった。友人の
終業式が終わったあとの学校は、いつもより静かなようで、なのに生徒達がみんなどこか落ち着かなくて、行き場のない熱気が充満していた。ひっそりした喧噪とでもいえばいいのか、さっきまで気づかなかったざわめきが、扉を隔てたことで認識させられた。エアコンが入っているはずの教室も、体育館も、ここに比べたらどこも暑くてうるさかった。少し、いらいらするほどに。
「そんなに急がなくていいよ。私も久しぶりに、ちょっと中見てみたいし」
李果がカウンターに行くのを見送り、私は室内を見渡した。
正直、何の特徴もない図書室だ。特別蔵書が多いわけでも、歴史が古いわけでもない。ただ、管理している図書委員がちょっと変わっているとは李果の談だ。
あまりに静かなので誰もいないのかと思いきや、夏休みの課題なのか、プリントを手にした生徒が数名、棚の周りをうろうろしていた。奥にある横長のベンチに横になって、顔に本をのせて昼寝をしている生徒までいた。ちょっとあきれてしまったが、外の喧騒から切り離されたかのように静かで涼しい図書室は、とても寝心地がいいだろう。
でも、もし図書委員にばれたら怒られるんじゃないだろうか。
私はとばっちりを受けないよう、そこからそっと遠ざかった。
「お待たせー。よかったー、休み前に目当ての本借りられて」
窓際の棚を何となしに眺めているとき、いくつも本を抱えた李果が戻ってきた。
「あれ? 変な図書委員さんとは何もなかった?」
「え? ああ、あの話? 大丈夫大丈夫。あれは、延滞とか何か悪いことしたら、学校の七不思議にのるような祟られ方をするってだけ」
「……え? 何それ……?」
私の不審な視線を受け流すように、李果は無表情でダイジョーブダイジョーブと唱え続けた。
「――それよりさ、夏休み中に活動あるってめんどくさいよねえ。雪花のとこも、さっそく明日から部活あるんでしょ?」
「え、あ、うん。そろそろ大会が近いからね」
李果の質問に気を取り直して答えると、彼女は天井を仰いで大きく息をついた。
「よくやるよねえ、こんな暑い時に外で運動なんて。考えるだけできついわー」
私は李果にほほえみを返し、側の窓からグラウンドを見下ろした。
確かに、うんざりするほど暑い。けれど、それでも私は外で走るのが好きだ。
自分の手足をめいっぱい動かして、全身で自由を味わえるから。