翌日──
荷造りをしている
彼は
「すまぬ。私が主上にお前を強く薦めたばかりに、逆に主上を煽ってしまったようだ。結果、お前を危険な目に合わせてしまった。大変面目ない」
実直な口調でそう述べ、頭を下げた。
最初戸惑いを見せた
「いいえ。きっと、こうなる運命だったのでしょう」
迷いの無い清々しい口調で答えた。
「運命……なるほど、そうかも知れぬな」
「もう荷造りを始めているようだな。行き先は決まったのか?」
「はい。【
「【
そうつぶやくと、所々白髪が混じって貫禄を増した顎髭をさすりながらしばし沈黙する。
そう察した
「仕えるべき国、主君を選ぶことは、連れ合いを選ぶに等しい重大な決断だからな。大いに悩んだ末の結論なのだろう。善き出会いがあることを祈っておるぞ」
もはや無理に引き留めはせず、彼女たちの新たな門出を祝す趙与。
「ありがとうございます。いろいろとお心遣いいただきながら、何ひとつ報いられずにここを去ることをお許しください」
「なぁに。私とてお前と娘との情を利用して無理矢理引き込もうとしたのだ。気にするな」
サバサバとした口調で堂々と本音を吐露する
「その
そこには、顔を半分だけ覗かせながら
「何か、前も同じようなことがありませんでしたか?」
「あやつは要らぬことには知恵が回るくせに、己の感情を表情するのは苦手ときたものだ」
二人がこちらに気づいていると感じた
「よ、よう」
以前と同様、何事も無かったかのような軽い口調で手を上げ、
「聞いたっスよ。主上の放った刺客に襲撃されたらしいじゃないっスか?」
まるで世間話でも始めるように問う。
「うん。でも、
「ふぅん、
うんうんとうなずきながら、
それにしても、と一息入れてから
「この前
「ごめんなさい、
「わかってるっス。何となくこうなるような気はしてたんスよ。ンで、どこに行くんスか?」
「【
「【
「ええ。だけど今度は【
「そうっスね。でも、なるべくなら戦場で相
二人は笑みをたたえ、握手を交わした。
お互い刃を交えることが再びあったとしても、決して後悔することの無いように。