「……なぜ、アレクサンドロス大王があれほどまでに
「その宝珠の力……ですか?」
「……アレクサンドロス大王は、この紅い宝珠の力を解放することが出来た。そして、世界に散らばっているという、同じような力を持つ宝珠を求め……大遠征を行った。だが、その途中でアレクサンドロス大王は死んだ……。その後は、大王の家臣同士が血で血を洗うおぞましい争いを繰り広げた。いや、今も繰り広げているそうだ……。彼らが真に求めていたものは領土ではなく大王の遺産……つまり、この宝珠なのだ。しかし……どういう訳かこの宝珠は、特定の者──アレクサンドロス大王の血族にしか力を示さないそうだ。だから大王の家臣たちはこぞって大王の血族を引きこもうとした。操り人形としてな……」
宝珠は特定の者にしか力を示さない──
同じく宝珠の所有者である
「……スタテイラには、同じ名を持つ母がいた。それがアレクサンドロス大王の妃の一人だった訳だが……。ある時、彼女は戦乱の原因となっているこの紅い宝珠を持ち出し、大王の家臣たちの手の及ばぬ所まで逃げようと試みたそうだ……。大王の血族に忠誠を誓った忠臣に守られながら、ひたすら東へと逃走した。しかし……彼女は
「……まだ赤子だったスタテイラは、この紅い宝珠と共に、忠臣に護られながら逃避行を続けていた。二十年もの間、追っ手の目を逃れながら、
その時、
「父上!」
「彼女は……本当は死んでなどいない。自らここを離れたのだ……。私たちに危険が及ばぬように……」
今まで
父が
これまでずっと
それは、紅い宝珠とアレクサンドロス大王の血を継ぐ幼き
「お前たちにはこれまで……辛い思いをさせてしまった……」
「……そんな私がこんなことを言えた義理でないのは分かっている。鬼畜の父と
手を伸ばしかけた所で、
本来ここにあってはならぬもの──
時代を超越した知識と情報の結晶──
それほどまでに強大な力を手にすることに対する恐れが、彼女を
果たして、それを受け入れるだけの覚悟が、自分にあるのだろうか?
自分の力がこの世界においてどれだけ通用するのか知りたい──
そんな想いが、この宝珠によって暴走したら、ただやみくもに戦火を
「……
迫りくる最期の時を感じた
「……
「はい、父上!」
顔をぐちゃぐちゃに乱しながらも、
「……
「「……はい!」」
勝気な
みんなの言葉を聞き、安心したようにほほ笑むと、
「……せき…ら…………」
途切れ途切れに呟く。
やがて瞳がゆっくりと閉ざされ、握られた手から力が失せる。
「……父上?」
最期は満ち足りた安らかな笑みを浮かべ、
「父上! 父上ェェェェェェェッッッ‼」
残された者たちの悲痛の叫びが
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