数十分後、最初に着替えを終えて現れたのは楽毅であった。
「相変わらず見事なおっぱいじゃのう。また成長したのではないか?」
「もう、齋和ったら! すぐからかうんだからァ」
楽毅は照れながら腕を組み、赤い一枚布の水着に覆われた豊満な胸を隠す。
「でも、確かに胸周りがちょっとキツいのよね。この前試着した時はピッタリだったんだけどなァ」
「……コヤツめ、完全にケンカを売っておるな」
ため息と共に吐かれたその言葉に、齋和は思わず口の端を引きつらせる。
彼女は水着姿になっても胸の曲線が全くと言って良いほど目立たないのだった。
「あ、でも体型でいったらあのコはなかなかのものよ」
そういって楽毅は小屋の方を指差す。
そちらに向き直ると、白い一枚布の水着を着て、盛んに手を振りながら楽毅達の方へ駆けて来る趙奢の姿があった。
楽毅程の豊満さは無いものの、彼女の胸は適度な大きさで、引きこもり派の割に全体的に整った体型を誇っていた。
「齋和ちゃん、お待たせっス~ッ!」
趙奢は駆けて来た勢いそのままに、再び齋和に抱きつく。
水着越しの柔らかな肉厚が齋和の顔を容赦無く圧迫する。
「ぬおぉぉぉぉ! 先程も何か柔らかい感触を感じていたが、まさか着やせする類だったとは……。おのれ、この隠れ巨乳眼鏡魔人めッ!」
「何スかそれ、おもしろいっスね」
齋和の怨色を全く意に介さない趙奢は、なおも胸を押し当ててくる。
「あの……お待たせしました」
その時、田単のおずおずとした声が彼女達の背後からかかる。
「ぬうぅ、どうせオヌシも──」
ようやく趙奢の束縛から抜け出して振り向いた齋和は、思わず目を大きく瞠いた。
爽やかな青い一枚布の水着に身を包に、気後れ気味に佇む田単の胸は齋和と同様膨らみに乏しく、ややもすれば背が高い分だけ田単の方が余計胸が貧しい様に見えたからだ。
「オヌシ、確か田単と申したな?」
「え、ええ、そうですが……?」
すると齋和は田単と握手を交わし、もう片方の手の親指をビッと突き、
「オヌシとは悩みを分かち合えるよき友になれそうじゃのう」
満面の笑みを浮かべて言うのだった。
「それは一体どういう意味でしょうか……?」
その言動に少なからず不満を感じたものの、田単は引きつった笑みを返すしかなかった。
こうして楽毅達四人は海水浴を楽しんだ。
その間、馮と驩は浜辺に人数分の日傘を設置し、後はその下で直立不動で待っていた。