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第3話 完全にケンカを売っておるな

 数十分後、最初に着替えを終えて現れたのは楽毅がくきであった。


「相変わらず見事なおっぱいじゃのう。また成長したのではないか?」

「もう、齋和さいかったら! すぐからかうんだからァ」


 楽毅がくきは照れながら腕を組み、赤い一枚布ワンピースの水着におおわれた豊満な胸を隠す。


「でも、確かに胸周りがちょっとキツいのよね。この前試着した時はピッタリだったんだけどなァ」

「……コヤツめ、完全にケンカを売っておるな」


 ため息と共に吐かれたその言葉に、齋和さいかは思わず口の端を引きつらせる。

 彼女は水着姿になっても胸の曲線が全くと言って良いほど目立たないのだった。


「あ、でも体型スタイルでいったらあのコはなかなかのものよ」


 そういって楽毅がくきは小屋の方を指差す。

 そちらに向き直ると、白い一枚布ワンピースの水着を着て、盛んに手を振りながら楽毅がくき達の方へけて来る趙奢ちょうしゃの姿があった。

 楽毅がくき程の豊満さは無いものの、彼女の胸は適度な大きさで、引きこもりインドア派の割に全体的に整った体型スタイルを誇っていた。


齋和さいかちゃん、お待たせっス~ッ!」


 趙奢ちょうしゃは駆けて来た勢いそのままに、再び齋和さいかに抱きつく。

 水着越しの柔らかな肉厚が齋和さいかの顔を容赦ようしゃ無く圧迫する。


「ぬおぉぉぉぉ! 先程も何か柔らかい感触を感じていたが、まさか着やせするタイプだったとは……。おのれ、この隠れ巨乳眼鏡魔人めッ!」

「何スかそれ、おもしろいっスね」


 齋和さいか怨色えんしょくを全く意に介さない趙奢ちょうしゃは、なおも胸を押し当ててくる。


「あの……お待たせしました」


 その時、田単でんたんのおずおずとした声が彼女達の背後からかかる。


「ぬうぅ、どうせオヌシも──」


 ようやく趙奢ちょうしゃの束縛から抜け出して振り向いた齋和さいかは、思わず目を大きくみひらいた。

 爽やかな青い一枚布ワンピースの水着に身を包に、気後れ気味にたたず田単でんたんの胸は齋和さいかと同様膨らみに乏しく、ややもすれば背が高い分だけ田単でんたんの方が余計胸が貧しい様に見えたからだ。


「オヌシ、確か田単でんたんと申したな?」

「え、ええ、そうですが……?」


 すると齋和さいか田単でんたんと握手を交わし、もう片方の手の親指をビッと突き、


「オヌシとは悩みを分かち合えるよき友になれそうじゃのう」


 満面の笑みを浮かべて言うのだった。


「それは一体どういう意味でしょうか……?」


 その言動に少なからず不満を感じたものの、田単でんたんは引きつった笑みを返すしかなかった。



 こうして楽毅がくき達四人は海水浴を楽しんだ。

 その間、ふうかんは浜辺に人数分の日傘パラソルを設置し、後はその下で直立不動で待っていた。

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