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閑話 冒険者の独り言




 俺はマーク・ハンター。

 Aランク冒険者だ。一年前にAランクになったばかりだ。


 俺は元々、狩人の息子で弓の名手という固有スキルを祝福の儀で得た。狩人によく現れるスキルらしい。

 幼い頃から弓に触れていた俺は、弓術スキルをすぐに発現させていたらしく、祝福の儀のときに弓術スキルもあって親が驚いていた。

 罠の設置は勿論、感知だったり、解除もお手の物だ。

 村によく来ていた冒険者のおっちゃんに剣も教えて貰って、剣術スキルもたぶん発現していただろう、俺は成人の13歳になると冒険者になるべく街に出た。

 狩人にはなれただろうが、俺は夢とロマンがある冒険者になりたかったんだ。

 俺はソロで活動し、徐々に実績をあげて、いつの間にかBランクになっていた。

 その頃から俺は女遊びを覚えて、一番人気の娼婦にそれはもうぞっこんだった。

 借金までして貢ぐようになった頃には、その娼婦しか見えてなかったんだろうな。

 ソロだったのも災いした。パーティーだったら、パーティーメンバーに注意されたりしただろうが、ソロだから誰も注意しない。

 そうして俺は借金によって奴隷になった。

 奴隷になったときは絶望って感じだった。他の奴隷たちも俺と似たような表情をしていた。

 みんな絶望していた。

 俺が奴隷になって暫く経った頃、貴族がやってきた。

 3歳の幼児を抱えた貴族だった。

 俺は何となく観察していたが、どうも、幼児が貴族に指示しているような感じだった。

 恐らく親子だろう。

 だが、幼児があんなにもテキパキ指示できるだろうか。

 俺は不思議に思っていたが、幼児に俺も買われることになって、ちょっと不安になった。

 けど、幼児に酷いことはされないだろうと、楽観的に思うことにした。

 幼児がアーロン・フォン・シュタインという名前で、本当に俺たちの主になるということを知らされたのは、俺たちが極北のヴァルト領に向かっている途中のことだった。

 幼児が主になるのは良いが、場所が極北ということに俺たちは絶望した。

 きっと炭鉱か何かの鉱山で死ぬまで働かされるんだ、と言って絶望する奴隷が結構な数いた。

 俺たちを乗せた荷馬車が山脈を越えてヴァルト領の森に入った頃、俺たちは異変を感じた。

 寒くない。寒くないんだ。

 先ほどまで結構な寒さだったが、春までは行かないが、秋の寒さくらいだった。

 俺たちは不思議に思いつつ、荷馬車に揺られた。

 暫くして、止まると奴隷商人が俺たちに降りるように指示した。

 そこには見たことがない透明な、恐らくガラスの建物があった。

 ガラスの建物の中には農作物が豊かに実っている。

 俺たちが驚いている間に、奴隷契約は済み、俺たちはアーロン様の奴隷になった。

 俺たちは古い方の領主館に泊まることになったが、古くても領主館だ、とても恐れ多いと俺たちは辞退しようとした。

 が、命令されてしまったので、旧領主館に泊まることとなった。

 それからは驚きの連続だった。

 ヴァルトバングルという万能な腕輪を貰ったり、極北の地なのに何故か豊穣の地になっていたり、ヴァルト森のSSS級モンスターをアーロン様が片っ端から狩ったり、競技場をアーロン様が作ったり、新しい街の壁をアーロン様が作ったり、トイレとか風呂が凄くなったり……いや、アーロン様って本当に3歳児ですか?

 それから、あっという間に数年が過ぎて、俺たちはアーロン様によって奴隷から解放された。

 俺はアーロン様のお役に立てるように、もっと強くなると誓った。


 ヴァルトダンジョンで俺は自分を鍛えまくった。

 ヴァルトダンジョンは初心者向けとは言っているが、それは上層までだ。

 上層は初心者、中層はベテラン、下層は強者向けの構造になっていて、どんどん成長できるようになっている。

 俺は下層で死に物狂いで強くなるべく頑張った。

 今はAランクになれたけれど、まだヴァルトダンジョンの最下層ボスを倒せていない。

 そろそろレベルが上がるから、倒せそうな気がするんだ。

 最下層のボスを倒したら、花屋のミーナちゃんに告白すると俺は決めている。

 だから、絶対に最下層ボスを倒すんだ!


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