ザフト領にやってきたロベルトとアーロン。
正装姿は目立つので、駅舎の貸し馬車を借りて領主館に向かった。
領主館に着くと、すぐに執事がやってきてロベルトとアーロンを領主館に迎え入れ、応接室に案内する。
暫くして、ザフト公爵閣下──トビアス・フォン・イストワールがやってきた。
白髪交じりの灰色の髪のオールバックに、銀色の瞳を持った優しげな紳士だ。
サーシャと交流するときにアーロンはトビアスと話していたが、今日は雰囲気が違った。
いつもは柔和な表情が真剣な表情で、雰囲気も緊張感がある。
「通信の魔導具で陛下から話を聞きました。ご案内します」
トビアスは2人を連れて領主館の裏口から外に出た。
「陛下から、我らザフト公爵家の役割をお聞きになりましたか?」
「いいえ」
ロベルトが応えた。
「我らは遠い昔から星読を生業にしていた一族でした」
トビアスは領主館の裏にある廃墟にやってきた。
「此処は旧王国時代に星読の塔と呼ばれていた塔の跡地です。我らは代々塔主を務めていました」
年老いた執事からカンテラを受け取ったトビアスは自身の魔力を塔の跡地の一角に注いだ。
ゴゴゴ、という音と共に床が動き、地下へ続く階段が現れた。
トビアスは階段を降りていく。
ロベルトとアーロンは後をついて降りていった。
アーロンは足元が明るくなるように光属性魔法【光玉】で光を出した。
「ありがとうございます。さて、我らには星読の他にもう一つやるべきことがありました」
地下への階段は1つの扉に繋がっていた。
トビアスは迷うことなく扉を開けた。
扉が開くと中の灯りの魔導具が反応し、光が灯っていった。
中は広々とした図書館のような場所だった。
「此処は我らの秘密の書庫です」
トビアスはそう言って中に入る。ロベルトとアーロンも中に入った。
「我らの先祖は二神に神託をいただきました。この世界の歴史を後世に繋げることと、我らは星読を生業にしておりましたので、歴史の中心となる場所は予測できました。ですから、その場所に赴いて歴史を記録したり、本を収集しました」
トビアスは部屋の一番奥の壁を押した。
すると、壁は開かれ、中には部屋があった。
「先祖代々受け継がれた本を納めた部屋です。お二人は勇者の末裔ですから、見る資格は十分にあるでしょう」
私は隣の部屋にいますね、と言ってトビアスは部屋を出た。
「アーロン、一緒に読むか」
「うん」
先ほどの部屋よりも規模の小さい書庫だが、それでも冊数は凄く多い。
2人は1日では読み切れなさそうな本の数に苦笑しつつ、まずは近くの本棚に向かった。