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 エルドはレジスタンスとして活動する中で、勇者を信奉する宗教、勇者信仰が各地に根深く残っていることに驚いた。

 ジパング王国の初代国王が勇者であることは有名だが、その勇者を神のように信奉し、勇者の血筋を神の眷属のような立場と思っている国民が意外に多いのだ。

 勇者信仰は根深かったが、勇者の血筋であるエルドが説得することで仲間になる者もおり、レジスタンスはその勢力を広げていった。

 レジスタンスのリーダーはアーサーで、副リーダーはエルドであったが、レジスタンスの中には大きな影響力を持つ四人の人物がいた。

 彼らは後に四大公爵と呼ばれることとなる。


 一人目は、水の賢者アウロラ・フォン・ベイリー。彼女は大昔に水の精霊と契りを結んだ者を先祖に持つ家系に産まれ、優れた水の魔法と精霊術を使う。先祖返りと言われる程に水に愛された賢者だ。

 彼女は、賢者や魔法士たちの懐柔を主に行い、多くの者をレジスタンスに引き入れていた。

 二人目は、豪商メルヒオール・ラヴィーン。彼は南の島国からやってきた移民の血筋で、代々商人として南の島国と王国を行き来してきた。メルヒオールは商才があり、メルヒオールの代で名のある豪商まで上り詰めた。

 彼は、多くの商人たちをレジスタンスに引き入れていた。

 三人目は、伯爵当主シュテファン・フォン・リバーズ。彼は、遠い昔、東部に豊穣を齎したという女性の血筋だ。とても人望があり、領民や近隣の領主たちをレジスタンスに引き入れていた。

 四人目は、星読の塔主ヘルフリート・イストワール。星読の塔というのは、政治について占ったり、貴族の相談を受けたりする機関だ。ヘルフリートは星読の民と呼ばれた一族の血筋で、代々星読を生業としている。星読の塔ができてからは、代々塔主として活躍している。

 彼は主に役人や貴族たちをレジスタンスに引き入れていた。


 レジスタンスの規模が広がり、軍に相当する部隊が出来上がった頃、アーサーは王城を強襲する計画を立てた。

 その頃、エルドには神託が降りていた。


 足元には白い煙のようなものが漂い、空は明るい橙色と桜色のグラデーションになっている。あまり見ない空の色をエルドは暫し眺めていた。

 前方に二人の人影が見え、エルドは身構えた。

 現れたのは、神々しい雰囲気の美しい男女──二神だった。

 エルドはすぐにひざまずいた。


「ようこそ、エルド」

「君にやってもらいたいことがある」


 1つ、王都の大神殿の地下にある勇者ケータの手記と水晶を回収すること。

 2つ、革命後に魔王が封印されている極北の地を領地として願うこと。

 3つ、極北の地に勇者ケータの手記と水晶を隠すこと。

 4つ、勇者の血を繋ぐこと。

 エルドはこの4つのことを二神に依頼され、様々な話をしたと記されている。

 話の内容までは記されていない。


(なんか、気になるな)


 と思いつつ、アーロンはページめくる。



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