本気と書いてマジと読む。
というような目つきの子供たちが勇ましく、競技場に入場してきた。
その気迫たるや凄まじいものがあり、傍から観ている観客も静かになる程だった。
だが、競技が始まると声援や歓声が響き渡り、大盛りあがりになった。
アーロンはほっとしつつ、会場を見守っていると、ロベルトがいた椅子(ロベルトはお手洗い)に黒いトカゲがいることに気付いた。
トカゲはアーロンの方を見上げて首を傾げた。
何とも言えない愛らしさを感じたアーロンはトカゲを手の平に乗せて眺めた。
「かわいいなぁ」
爬虫類が苦手な者からすると理解できないと思われる感想をアーロンは抱きつつ、トカゲの頭を撫でた。
「なまえ、ほしい」
「そうだねえ、目がルビーみたいに赤いから、ルビーはどうかな?」
「ルビー!わたしルビー!」
そういえば、なんで会話してるんだろう、と思い、アーロンは正気に戻った。
「もしかして、君も精霊王だったりする?」
「うん、わたし火の精霊王〜。この前代替わりしたばかりだから、まだ成長期」
「そう、なんだ」
意図せず火の精霊王と契約したアーロンは戸惑いつつも、こう思う。
(かわいいからいいか〜)
ルビーの可愛さに目が曇ったのかポンコツ化したのか馬鹿になったのかは定かではないが、その思考は大丈夫なのか、と、どこかでガイドが思ったとか思わなかったとか。
運動会の子供の部は、村人の息子で、力自慢のポール・ウォード率いる赤チームが勝利した。
たくさんの大銅貨が詰まった袋を受け取ったポールは嬉し涙を見せた。
運動会が終わると、アーロンの誕生日会兼収穫祭が行われた。
競技場の近くの平原で、アーロンのヴァルトバングルから大量の肉と野菜、パン、大きな鍋と調理器具、調味料などを取り出し、アーロンが石の王で小回りのきく人形ゴーレムを作り出した。
ソフィアは現在妊娠中の為、新領主館でお留守番中の為、女衆のリーダーを中心に女衆が食事を作り始めた。
その間、男衆は、ロベルトがヴァルトバングルから取り出した酒をちびちびと飲みつつ、雑談している。
子供たちは疲れたのか居眠りする者もいれば、走り回る者もいたり、雑談する者もいたりと様々だ。
「あるじ〜」
「うん?なんだい、ルビー」
「台座が欲しい!」
「台座?」
「うん」
アーロンはファンタジーによくある白いルネサンス風の台座を作った。
ルビーはアーロンの肩から素早く降りて、台座によじ登り、口を大きく開いた。
ぼおっ、という音が聞こえるくらい勢いよく真っ白な火を噴いたルビー。
その火は虹色の光を帯びていた。
「精霊火だよ」
素早くアーロンの肩に戻ってきたルビーはそう言った。
「うん、ありがとう、ルビー」
アーロンは雨に濡れると火が弱まるかもしれないからと、古代ローマの神殿っぽい小さな建造物を建てた。
ルビーはちょっぴり不満そう。
「わたしの火は雨も平気だよ」
「一応ね」
集団のちょっと離れた場所の出来事だったので、気づかれなかったが、帰る時になんじゃこりゃ、という酔っ払いたちの驚きの声で皆の知るところとなった。