賢者オズワルドがやってきた翌日、オズワルドの土属性魔法の講義を受けたアーロンは、すぐに土属性魔法を発動できるようになった。
それを見て、オズワルドは「儂よりも優秀な賢者を呼ぶ必要があるのぅ」と呟き、アーロンに合格と告げて、去っていった。
挨拶された両親はぽかんとしていた。
暫くいると思った者が次の日に去ってしまったのだから、無理からぬことだ。
オズワルドが去った次の日、牛を連れた商団がやってきた。
マップで商隊を確認していたアーロンは森に突き刺さっているアダマンタイトの巨大な剣を消して、ソフィアに抱えられて商隊を迎えた。
この頃にはアーロンによって土壌改良されたことや、精霊石の影響もあってか、豊かな土壌が育まれ、多くの作物が
これは改良された土壌もあるが、一番の原因は精霊石だった。
一週間で実ったのは豆類や馬鈴薯。二週間で実ったのは、比較的寒さに強い野菜のホウレンソウやキャベツ、ダイコン。どれも野菜の旨味が凝縮された高品質のお野菜で、高ランクの魔物のお肉と一緒に各家庭で食べられている。
大量に実った豆たちは、牛を持ってきた商隊の目にとまった。
持ってきた牛たちがヴァルトで生産された豆類を食べるとやけにご機嫌なのだ。
試しに商隊を率いるブース商会の中堅商人が豆類を食べてみると、とても美味。
牛の卸売や飼料を取り扱っているブース商会。
牛が喜ぶ飼料を逃す手はない。
面白そうだと付いてきていた商会長が一番ノリノリでロベルトに商談を持ちかけた。
結果的に豆類一袋1kgで大銅貨3枚でブース商会が買い付ける契約が交わされた。
普通の豆類であれば、卸値(仕切り価格)は1kg大銅貨1枚から2枚程だ。ほぼ倍の値段が付いた。
ヴァルトの豆は高級路線で儲けを出すようだ。
まずはブース商会の伝手で販路を拡大する必要があるが、商会は今回、100kgの豆類を買い付けして良い笑顔で帰っていった。
ヴァルトは銀貨3枚の売上を得た。
ブース商会が連れてきた牛50頭(乳牛30、肉牛20。計銀貨250枚※事前支払い済)はヴァルト森を開拓してアーロンが作った牧草地帯に放し飼いされることになった。
牧草地帯には四隅にオリハルコンの杭が刺さっていて、結界と状態異常回復、温度調節の魔法陣が刻まれている。
ヴァルト森の魔物が万が一襲ってきても結界によって守られるだろう。
区分けには柵とアーロンが石の王で造ったゴーレムを使っている。
ゴーレムは侵入者対策にもなるので一石二鳥だ。
三日後、20頭の馬(大銀貨20枚)を連れてきたのはウォーノック商会だ。
ウォーノック商会は馬の卸売を主に行っている商会だ。
ヴァルト森に近い牧草地が馬専用なので、商人たちは馬をそこで放した。
馬たちは牧草を食べるとご機嫌な様子になる。
商人たちは牧草に目を付けた。
極北なのに瑞々しい高品質な牧草。とても魅力的に見えた商人たちは、商隊の代表である副商会長に取り扱いたいと申し出た。
副商会長も同じ意見だったようで、すぐにロベルトに話が来た。
余っている牧草地の牧草を干し草にして売って欲しいと。
アーロンはその話が出るだろうと思っていたので、石の王で造ったゴーレムを使って干し草を大量に作っておいた。
契約は干し草1ロール当たり小銀貨3枚。
普通の干し草1ロールは小銀貨1枚程度なので、こちらも高級路線を行くのだろう。
今回の取引は100ロールで、大銀貨3枚になった。
それから羊30頭(銀貨60枚)、鶏50羽(小銀貨50枚)もやってきて、ヴァルト村で手が余っていた酪農部の奴隷たちは忙しそうだ。
やりがいがあるのだろう、皆、表情が明るい。
アーロンはスノウと一緒に鶏と戯れつつ、その様子を眺めて満足そうに笑みを浮かべた。